放談ラジオ音響系

予算1万円でヘッドフォン

 iPod touchで音楽を聴く時のヘッドフォンを購入。結局4,980円のものに落ち着いたのですが、その選定理由などをつらつらと。



ソレもコレも歳のせい

 普段音楽を聴く時は、日本の悲しい住宅事情の要請によりヘッドフォン装着を余儀なくされているのですが、今まで愛用してきたソニーのDJ用モニターであるMDR-Z700が最近、重くなってきました。いや、何かが付着して重くなったわけではなくて、長時間使用していると疲れてくるようになったのです。まあ、別にDJを目指しているわけでもないのにMDRを使っているのは、元気な出音が気持ち良いからなのですが、何か別の作業をしている時にBGMとして音楽を聴く場合は小さなインナー・イヤータイプのものでいいなと思ったのです。ソレもコレも歳のせい。

【fig.1】気が付けば、かれこれ7年使い込んでいるMDR…。こいつにはソニータイマーが内蔵されていないのですね。

 そこでネットを使っていろんなヘッドフォンのユーザー・レビューなどを参考にしてみたのですが、やはり音の響き方や特徴を言葉に変換するのは無理がありあます。「実際に自分の耳で確かめてみなくては分からない」という当たり前の意見が唯一の参考になりました。というわけで意を決して家電量販店へ。予算は1万円以内厳守です。

 ちなみにiPod touch付属のヘッドフォンも試してみたのですが、音質以前の問題として、自分の耳穴にスピーカー部の形状がまるで合っていない。即、却下となりました。

驚きの千差万別

 意外にも「音の鳴り方の質」にはそれほどコダワリの無い僕、音楽がそれなりに聴こえていればいいや、と普段は考えているのですが、メーカーや製品によって音の鳴り方は全く異なるということは知っています。当然インナーイヤータイプのヘッドフォンも色々個性があるのだろうとは頭で理解しているのですが、やはりボディ自体が小さいし「実際はそんなに違わないのでは?」と思っている自分も居たり。そんなこともあって今まで各種製品を聴き比べたことが無かったのですが、折角なので今回は自分のiPod touchに試聴する楽曲を入れて持参し、いろいろ比較してみました。

 まずは普段ソニー製品を使っていることもあって、当初購入予定にしていたソニーのヘッドフォン(9,980円)を装着。すると音が小さい。iPod touchのボリュームを上げて、目盛り8割くらいのところでいい感じの大きさに。予想と違い、何か元気が足りない感じ。値段の割りにはこんなものなのかいな、と。

 そこで隣にぶら下がっていたオーディオ・テクニカを接続(4,980円)。もちろん再生する前にボリュームを下げておいたのですが、目盛り4割くらいで先のソニー製よりも大きな音で鳴ります。ただ、音質がドンシャリというか、高域と低域が前へ出るよう意図した音作りが施されているのはすぐ分かって「ちょっと僕にはヤング過ぎるかも」との印象。そこでさらに同メーカーの9,980円のものに換えてみると、音がいきなり上品に。なるほど、物によってこれだけ音が変われば、そりゃコダワリのコメントがネットに溢れるのも分かります。

 初めての試聴でインパクトが大きかったせいか、あれこれ取っ換え引っ換えして試聴するのが楽しくなってきました。そこで予算外ではあるものの、1万円オーバーの各メーカー製品もテスト。最初は出音が小さくて良い印象を受けなかったのですが、ボリュームを上げて行くとその音の響き方がそれまでのものとはまた一味も二味も違っていることに驚き。普段、クチコミ系サイトなどでよく目にするユーザーのコメントで「豊かな響き」とか「音の広がり」というような、抽象的な文言を見かけますが、僕がそこで感じたのは「フェーダー位置が分かる」というような感覚です。その楽曲をミックスしたエンジニアが、どういう意図を持って各楽器を配置しているのか、ミキサー上のフェーダーの位置やパンニングのツマミ位置が具体的に目に見える感じです。こういう感覚は初めてだったので、とても新鮮でした。

【fig.2】フェーダーのイメージ。

 そんな感じで売り場に置いてあるインナー型のヘッドフォンをほとんど全て試聴。結局1時間半くらいかかったのですが、しかし最終的にパッケージを手にしてキャッシャーへ運んだのは4,980円の製品でした。

用途に合ったものを選びました

 1万5千円〜3万円弱する高級ヘッドフォンの音の鳴り方が素晴らしいのはよく理解できました。しかし、なぜ4,980円なのか。予算1万円以内であるのなら、9,980円のものでも良かったハズ。その選定理由は、普段音楽を聴いている時のボリュームに関係しているのです。

 僕も20代の頃はかなり大きな音量で音楽を聴いていました。週末なんぞは一日部屋に籠もってヘッドフォンを付けっぱなしにしていて、友人からは「そんなに音が漏れるくらいの音量で大丈夫か?」とか言われるくらいだったのですが、それでも全然大丈夫だったのはやはり若さだったのでしょうか。ぷぷッ。しかし30代になった頃から、以前のように大音量で音楽を聴かなくなったのです。もちろん音楽を嫌いになったわけではなくて、好きである事は変わりなく、むしろ聴く音楽のジャンルもさらに大きく広がったくらいなのですが、いまだ好きであるからこそ、まだこれからも音楽を聴き続けて行きたいからこそ、これまでよりも耳を大切にしたいと考えるようになったのです。それからボリュームを絞るようになりました。そのおかげか、老いた今でも健康診断で難聴傾向は出ていません。

【fig.3】自分でも意外な展開に。オーディオ・テクニカの4,980円。

 先の高級ヘッドフォンは、iPod touchのボリュームを上げて行くと、よりその音の響き方が分かるような感じです。つまりその誘惑に負けると、どんどんボリュームを上げて行ってしまう。予算以内の製品でもその傾向はあって、例えば4,980円のものと9,980円のものを比較すると、最初の出音は9,980円のものが小さい場合が多いのですが、ボリュームを上げて行くと値段の安いものよりよい響き方をするようです。つまりここでも、音楽を聴いているうちに、さらにボリュームを上げて行ってしまう恐れがある。

 普段、iPod touchのボリュームは半分より下、大きくした場合でも4割くらいの位置にしています。この位置で欲求不満が出ない程度に音の輪郭が聴き取れる物は、意外にもオーディオ・テクニカの4,980円でした。先に、メーカーサイドが意図した音作りしている、と書いたものです。自分でも予想外の展開。

【fig.4】普段は大きくてもせいぜいこの目盛り位置。

 決して、良い音の鳴り方をする製品ではありません。聴いてすぐ「これはないな」と思わせる音作りをしているのですが、その作為のおかげで小さなボリュームでも楽曲の輪郭線が分かるのです(ちなみにiPod touch内蔵のイコライザーは常にオフ状態)。もちろん高級品にあったようなフェーダー位置が分かる音の分離なぞ期待できるわけもなく、実際ボリュームを目盛り5割より上げた途端、音が団子状態になって悲惨になるのですが、かえってそれがボリュームを上げようとする気持ちにリミッターをかけてくれるのです。

 以上、予算1万円以内なのに、9,980円の価格帯にある製品を選ばず4,980円のものを手にした理由を書き連ねてみました。今回の記事であえて比較試聴した各メーカーのヘッドフォン型式名を明記していないのは、それによって先入観を与えないようにするためです。アレコレ書いても無意味ですし、やはり「自分の耳で聴いて選ぶべし」という鉄則は変わりませんね。あ、音に限らずイヤーパッドの形状も同様、いろいろ試してみて一番自分の耳にフィットするものを選びました。

【08/1/28更新】