放談ラジオ音響系
ビョーク来日公演・日本武道館
ビョークですビョーク!単独では7年ぶりとなるらしい今回の来日公演、行かないワケにはいきません!貪欲に先端を取り入れる彼女だけあって、ステージは何とマルチタッチ率97%(誇張気味)。尚、例により曲目に触れている箇所があるので、関西公演に出向く方はその後にお読み下さい。

マルチタッチ・ガジェットが一堂に会する最先端ステージ
女性ボーカルと言えばR&B・なんっちゃってラップ、あるいは路上弾き語り系が跋扈(ばっこ)している日本のミュージック・シーンには以前から食傷気味なのですが、そういう既成の枠組みにはカテゴライズ不可能なスタイルで我が道を突っ走っている(がしかし、ポップの領域に留まっている)彼女にこそ、今我々に欠如している何かを感じられるのではないか?というわけでビョーク来日公演・日本武道館へ行ってきました!
な〜んて、もちろんそんな大げさな態度で出向いたわけではなく、ただ単にビョークの捻り出す音楽が大好き、大声出してワイワイ騒ぎたいという無邪気な理由で赴いたわけですが、やはり行って良かった…。ここはひとつひねた観点で公演の感想を。
今回のビョークのワールドツアー、エレクトロニクスを担当するバック・ミュージシャンの「マルチタッチ率」が異様に高い!
まずはjazzmutant社の「Lemur(もしくはDexter)」。これもiPhoneのようなマルチタッチパネルを装備、プログラミングにより様々な機能を、液晶パネルにグラフィカル表示されたスライダーやノブに割り当てて、複数の指先で同時に操作可能なガジェット。ステージでは一番多く使われてました【fig.1】。
【fig.1】jazzmutant社の「Lemur」。そしてまさか日本に運んでくるとは思わなかった「Reactable」。これは昨年記事にしたのですが、ぼんやりと光るテーブルの上にオブジェクトを配置することで発音させてました。これが部屋にあったら面白いだろうなあ〜【fig.2】。単純に美しく変化するグラフィックを眺めているだけでもトリップできそう。
【fig.2】昨年記事にも書いた「Reactable」。で、最も音楽的に貢献していただろうと思われるガジェット、ザ・国産「テノリオン」です【fig.3】。
【fig.3】国産ガジェット「TENORI-ON」。テノリオンは内蔵音源以外にも、ユーザーが用意したオリジナルのサンプル波形をインストールして使うことが出来るのですが、ステージではビョークの歌声のサンプルをインストールしてランダムに発音させてました。テノリオンを有意義に使う為の第一歩は、自分でオリジナルの音色を用意してそれを奏でる事なのでしょうから、この使い方は至極真っ当です。それにしても今回の公演、未発売の物も含めこれだけのガジェットを一度に、しかも「実演」で体験できるとは!
ブラスである
今回のツアー編成、ドラムとキーボード、エレクトロニクスが二人という微妙に変則な構成に、なんとブラス・セクションが加わっていたのですが、実はこれがとても素晴らしいパフォーマンスに大きく貢献していたのは確か。女性のみ10人で構成されたブラス・セクション、いわゆるビッグバンド系の切れ味ある音色ではなく、どこか「ほんわか」している牧歌的な音色がステージ全体のトーンを決定していました。これは個人的にも数年前から感じている「今、ブラスが来ている」という漠然とした何かに見事合致して思わず感動。ストリングスじゃなくて、ブラスなんですよ。例えば今、日本のラジオでかかるほとんどの歌のバックには、日本人が無意識のうちに共鳴してしまう、過剰に感傷的ともいえるストリングス・アレンジが施されているのですが、あれ、どうにかならんか、と常々思ってるんですよね。それが艶やかな女性ボーカル物ならまだしも、男節全開!みたいなヒップホップ系の骨太な歌ものにも、ハンコで押したような感傷的ストリングスが絡んでくるものが非常に多い…。萎えます。お手軽にドラマティックに聴こえるので、そうしたくなる気持ちは分からんでもないが、実はかなり笑えるのでそこのとこ、よく考えて欲しいです。アーティストとは名ばかり、職業アレンジャーにオケを依頼してばかりいたら、音楽のオリジナリティなんてこの国からは発生しません。
おっと閑話休題。ほんわかしたブラスが素晴らしい鳴りを響かせていても、そこはビョーク、エッジの効いた激しいビートがガンガン突き刺さってくるわけです。ギターレスでも十分過激。実は僕、最新アルバム『ヴォルタ』の中で大好きな楽曲は、アルバム中一番パンクで過激な「Declare Independence」だったりするんですが、何とラストソングとして場内に轟いたのはこの曲だったのです!見事なシンクロ率で感動!何と言っても、ビョークの歌声そのものが一番過激なのですよ。

