
殉教・微笑
小島信夫【著】:講談社(1993年)
ここ最近続けて読んだ『寓話』『残光』のインパクトがとても強かったこともあり、ではそんな小島信夫の過去作品はどうだったのかと、興味が沸いて手にしたのがこの初期短編集。この時点ではまだあの「実験的」とも言えば良いのか、突飛な構成の作風は現れておらず、極普通の短編だったことに何故か安堵しました。さて、その感想を簡単にと思ったのだけれど、どう言えばよいのか、どれも普通の小説なのですが「普通に笑える作品が多い」というのが意外で印象に残っています。「アメリカン・スクール」なんて着想が面白くて笑ってしまうし、「憂い顔の騎士たち」も笑えた。いや、さっきから面白いだの笑えただの、もっとしかめっ面をして深刻に悩んでもいるような雰囲気を出さねば、な〜んて。

女流
小島信夫【著】:集英社(1977年)
本作もまた『残光』で言及されていたのですが、ここに登場している人物は著者本人含め実在した人物たちで、女流である太田満子が実は大庭みな子であるということに興味を持ち(というか、それはホントなのだろうか?何が真実で何が虚構なのか分からなくなっています)、古本で入手し読んでみました。本作も構造的には「普通」で一般の小説と変わりなかったのにホッとしたというか、逆にそれが物足りなかったというか、一体僕は小島信夫作品に何を求めているのやら…。ちなみに大庭みな子の作品はだいぶ昔に『寂兮寥兮(かたちもなく)』を読んだ事があります。

点と線
松本清張【著】:文藝春秋(2009年)
昨年だったか、某雑誌でこの作品の中で老刑事が辿った各地の今が、当時からどう変貌してしまったかという特集記事が組まれていたのを偶然読んでちょっと興味を持ち、久々に推理小説というジャンルの作品を手に取りました。純粋なエンタメ作品としても久々な感じで、読んでいてお気楽、実に面白いなあと仕事を終えて通勤電車に乗る事が待ち遠しく思えるほどだったのですが、さて、しばらく読み進めていくと主に事件を追うことになる三原警部補は想像してたよりかなり若い…。おや、雑誌で読んだ印象と違うなあと思いつつも読み進めていくと、何となくぼんやり記憶に残っている移動経路やおよその筋書きと違うような…。いよいよ物語も終盤に近づき、事件の真相も明らかとなり、とても後味の悪い印象で最後の一行を読み終えた時に確信したのです…。
これは、雑誌の特集で組まれていた作品とは違う!
ブッ飛びました。物語中の謎は解けた、しかし僕の目の前には新たなる別の謎が立ちはだかることに。果たして、某雑誌で取り上げられていた本来の作品タイトルは何だったのか。原作者が松本清張であることは確かなハズ(たぶん)。記憶力も相当衰えたのか、それともただのアホなのか、あまりに迂闊な自分の頭を殴りたくなったのは、何も三原警部補だけではありません。 しかし古今東西、事件のナゾを解くに何よりもまずデカに必要とされるのは粘着的執拗さなのかも、来月にはその本来読むべきだった作品が何だったのか、見事解き明かしてやりますよ!>なんだそれ。
ちなみにこの『点と線』、新潮文庫版と文春文庫版があるのですが、当初新潮文庫棚を探してみたものの在庫がなく、あちこち彷徨っていたら文春文庫棚にあったコレを見つけ手にしたのだけれど、風間完氏による挿し絵が妙に雰囲気あって、コレにして良かったです。 挿し絵のある小説というのも久々でした。
ヒトコトメモ
■今月はさらりと流してみました。さらり過ぎ、とも。
