連載第3回
2011年12月31日
2011年個人的映画ベスト

 今年2011年は「トロン:レガシー」に始まって「アンダーグラウンド」で終わったのだけれど、いつも通りノンジャンルで気の向くまま楽しんだ映画鑑賞60本、数少ない本数だけれども、今これを書いている時点で最も印象強く思い出す作品、仮にそれを本年ベストワンとするなら、僕は迷わず『わたしを離さないで』を挙げておきたい(『SOMEWHERE』も頑張ったけど次点)。

 まず何よりも圧倒的な映像の美しさ(それは映画にとって正義です)。スクリーンを流れゆく光を言葉で言い尽くせない歓びを感じながら見つめていた記憶が残っています。例えば上の場面、キャリー・マリガン演ずる主人公がただ壁際に置かれた小さな机の上で簡素な朝食を摂っている、たったそれだけの映像がたとえようもなく美しいのです(残念ながら圧縮されたDVD映像でそれを再確認することは出来ません)。それ以外にも美しい場面はまだまだあって数え上げたらきりが無いのですが、その映像の美しさによって増幅される強い「痛み」が(それは鑑賞中、不覚にも貧血を起こしてしまった『127時間』や、局部を切断するに至る『アンチクライスト』の比ではありません)、未だ深く心の奥底に居残って疼いている…そんな映画でした。