連載第47回
2013年9月14日
Voyager 1(ボイジャー1号)太陽系の外へ

 秋とよぶにはまだ早い、夏が引き続いている感覚が拭いきれない一日だった昨日、点けっ放しにしていたラジオから聴こえてきた幾つかの話題の中、何となく心に響いたのは、あのボイジャー1号がついに太陽系の外側へ抜けた、というニュースでした。

 この2013年を迎えた現代においてさえ、あんな事やそんな事のような馬鹿げた騒動を飽きもせず繰り返している人類という、見た目はただツルツルの肌をした猿みたいな奴らが、その昔(当時子供だった人間はもうとっくにおっさん、おばさんになっているくらいの昔)にせっせせっせと汗かきながら組み立てた機械の塊が、それを作った人類自身は将来においておそらく到達することもないであろう遥か遠方の暗黒の彼方へたった独り(擬人化は好きではないが)突き抜けていった。

とても、感慨深い。

 僕は捻くれていますから、ボイジャー1号が太陽の巨大で見えない手の届く範囲を逃れ出たというだけで(でもまだ銀河系の庭の中だけどな)、もう人類の成すべき役目は終わったのではないかと、割と真剣に思ったりしたのです。もしかしたらいつかどこかで、人とは似ても似つかないような形状の知的生命体と出会ったりするのかもしれないけれど、その未知の誰かがボイジャー1号の軌跡を辿って地球にやって来た時、彼らの期待を儚く打ち砕いてそこには廃虚と雑草以外、何も残っていなかったとしても、全然それで構わないんじゃないかという気がしました。たぶん、モノを作るというのは、結局そういう事なんじゃないだろうか…。感覚的でうまく言えないけれど、ここに至るまでの僕ら人類の営みは、まるで「詩のようだ」と思いました。

 ボイジャー搭載の、数十年に渡り駆動し続けるプルトニウム電源をして「宇宙の彼方へゴミを放擲するとは何事か!」と怒り心頭の御仁もいらっしゃることでしょう。しかし僕ら自身、遥か昔に誰かが放擲したゴミの成れの果てなのだとしたら、それ故に未だ小さな雑音を発する存在でしかないのだと考えれば、やはりまるで

「詩のようだ」

と思うのです。

ボイジャーのお仕事で一番強烈な印象を残したのは、やはり何と言っても木星の近距離撮影写真。このドロドロして怖いような雲のうねり、色彩を見よ(まるで公害怪獣ヘドラみたいだ)。一体そこはどんな世界が広がっているのか知りたい、この厚い雲の海の中へダイブしたい!