連載第58回
2014年3月16日
初めてTOEICを受験してみたが最後に倒錯した

 TOEICテストを、ちょっとした興味本位で受けてみました。テストを受けたからと言って今の仕事や将来において特にメリットがあるわけではないのだけれど、「受験」というイベントそのものがとても懐かしくて、あの妙な緊張感というか、ストレスというか、そういう刺激を久々に感じてみたいなと思ったのもあるが、それ以上に今回は「全く予備知識ゼロ・予備勉強ゼロで受けたらどうなるか?」という実験(ほとんどネタ)をしてみたかったというのが主な理由。
 それにしても、これまでの人生において最後の試験は果たして何だったか…。もしかしたら、学校の試験もほぼ終えた後のモラトリアムに受けた中型自動二輪の試験が最後だったかも、というくらい久方ぶりの事です。受験費用の約5,000円はもちろん自腹で、そんな大金はたいて見合うだけのネタになるのか…という気もしないでは無かったけれど、でもすごくワクワクするし、面白そうじゃないか。

 さて。「全く予備知識ゼロ・予備勉強ゼロ」ってどれくらいかというと、まず日常で英語に触れるとしたら映画鑑賞か(でも日本語字幕を追ってるだけだが)、FMラジオでDJが時折英語で話しているのを耳にすることくらい(最近はもっぱらInterFMを聞いています)。自分から積極的に英語の本を読んだり辞書を引いたり、英語学習アプリなんかを使う事はゼロです。TOEICの試験そのものについての予備知識も全くゼロでしたが、さすがに試験に必要な道具は何か?と友人に尋ねて「鉛筆と消しゴム」は持参しなければいけないということは教えてもらいました。そして試験当日。テスト開始10分前に急いで会場へ。配布されていた「受験のしおり(解答方法、注意事項など結構文章量多い)」に素早く目を通して初めて、驚愕の事実を知りました。

質問も英語なのかよ。

 これは予想外だった。問題用紙には日本語の印刷部分は一切無いのか。ここで初めてちょっぴり冷や汗が出た。が、無情にもすぐに試験は始まり、まずはリスニング100問に解答し、続いてリーディング100問に取りかかるも、いつもの癖でついついテキストをじっくり読み込んでしまい、時間が全く足りず74問目に辿り着いた所で時間切れ。2時間はあっという間だった。疲れたが、でも久々に心地よい疲労感だったかもね。

果たしてその結果や如何に

 別にもったいぶらず、満点の半分にも満たない点数だった残念な結果は下に晒しておく。個人的にTOEICで高得点を目指すインセンティブは与えられていないし、今後も試験対策用の勉強に励もうという気もないのだけれど、でもここ数年、英語が自然に「聞こえるようになってきた」というのは単純にとても楽しいと感じています。

 何となく聞こるようになった理由は明白で、僕の場合は映画鑑賞。何年も映画館の暗闇の中でスクリーンをぼんやり眺め続けていたら、そんなものが棚からボタと落ちてきました。忘れもしない最初の衝撃は数年前、映画『明日に向って撃て!』の主題歌「雨にぬれても」がラジオで流れてきた時。何となくぼんやり聞いていたのに、その冒頭のフレーズの歌詞を耳にして「ああ、頭上から雨が降り続いているのか…」とその情景が思い浮かんだ瞬間です。小学生の頃から大好きだった歌だけれど、初めて歌詞が聞こえ、その意味が伝わりました。

 もちろん現状も全フレーズを聞き取れるレベルにはほど遠いのだけれど、そんな風にふと耳に入ってきて意味が伝わることの何とも言えない喜びは日々実感しています。最近で言えば、例えば変な帽子が話題になったファレル・ウィリアムスの『HAPPY』は、サビの部分で坂本九ばりの「幸せなら手を叩こう」というような意味の歌詞を歌っているのが自然に聞こえてきます。だからバックトラックにハンド・クラップ(手拍子)が入っているという楽曲アレンジの楽しさも分かる。

でも、しゃべるのは難しい…

 今回のテストで自分には全く語彙が足りない事が実感できました。ちょっと欲も出てきたので、ヒマな時に英単語でも覚えようかなと思います。しかし実際の日常生活で英語を役立てようと思ったら、聞くだけ・読むだけ・書くだけではダメなのではないか。自分から話しかける事が出来ないと意味が無いような…。実は僕の密かな目標は、非常事態におかれた時に「トイレはどこですか?」「警察を呼んでください」「少しお金を恵んでください」を英語圏の人に伝えられるレベルに達することなんですが、しゃべりを練習するのはかなり難しい。まずモチベーションがどこにも無いし、正しい発音かどうかの判断も出来ない。それより何より、独りでカタコトの英語をしゃべっている場面が怖い…。誰か適当な相手が欲しい。

Siriじゃないか?

 英語バージョンのSiriを相手に英語で話しかけるというのはどうだ?こちらの意思が正確にSiriに伝わっているかどうか、結果はすぐに判るんじゃないか。Siriが理解出来るまで何度も何度も語りかける、それでも相手は疲れないし飽きも来ない、アホな人間相手にいつまでも根気よく発音練習に付き合ってくれるし、もちろん僕の事を嫌いになることは無いに違いない。しかも異性。これぞ人工知能のあるべき姿、iOS7がスムーズに走るガジェットを所有すべき真っ当な理由が遂に見つかりました。待っててくれ、Siri!

全く関係ない話から最後はSiriに無理矢理結びつけてしまう「倒錯」シリーズ第2回でした。記念すべき第1回目の倒錯はコチラになります。