連載第47回
2013年6月16日
新しいMac Proにキョトンとする

 さすがに今はもう昔のように朝までAppleの基調講演を見て楽しむということはもう無くなって、その代わりになるべく夜早く寝て朝早起きし、仕事に出かける前に幾つかのニュースサイトで要点をナナメ読みするというのがここ数年のスタイルになっています。今回のWWDC 2013も同様、6月11日の日付変更すぐに就寝、朝目覚めて横になったまま、そばに置いてあるiPadで普段訪れている関連サイトにアクセスしてみたのですが、そこには「新しいMac Pro」という見出しの下に黒い円筒の画像が貼り付けてありました…。
 まだ微睡んでいたので、しばしぼんやりとその円筒をながめていたのですが(どんな表情で眺めていたのか想像すると笑える)、数秒ののち脳裏に浮かんだのは

管理人、ヘマしてTENGAの画像でも貼ってしまったか。

という「事故判断」でした。いや、これは冗談ではなくて本気でそう思ったのは確か。御覧あれ、この吸い付くような質感、上部に開かれた口腔の縁の柔らかそうなベベルの取り方、2013年期待の最新型ブラックTENGA(プロ向け)といわれればすぐ納得してしまう外観です(使ったこと無いのでテキトーに書いてますが)。しかしここでTENGAとは何か、多くは語らないでおきましょう。なにせこのサイトはカメラ女子を主要訪問客層に想定しているのですから。来ないけど。

驚くでもなく、笑うでもなく

 この黒い円筒が本当に新しいMac Proであることを信用するのに30秒ほどかかったか、講演ビデオからのキャプチャ画像(手前にはフィル・シラー)と本国Appleサイトで専用ページが実際に公開されていることを確認するまで時間を要したのですが、どうやら本物らしいと分かった後も大きく驚くでもなく、笑うでもなく、あっけにとられたというか、タイトルのように「キョトンとしていた」というのが正しい表現ではないかと思います。昨年の基調講演後の記事には「キューブなMac Pro」に期待していることを書いていたりして、確かに現行のMac Proから不要と思われるスペースをどんどん削っていけば各辺30cmほどの立方体くらいにまでダウンサイズ出来るだろうとは誰でも考えることでしょう(フリフリのThunderbolt大作戦は内部拡張性を廃したマシンの登場を想定して企画したものですし)。しかし本体のフォルムが「円筒」になってしまうとは全く予想だにしませんでした。単純にフォルムで見れば、同時期に発表されたXbox OneやPS4を完全に出し抜いています。

Mac Pro 2009の内部

 現行Mac Proの内部を眺めてみて、今後は不要だなと思った部分をオレンジの線で囲ってみます。光学ドライブベイは過去の物だし、4つある回転系ドライブベイもThunderboltで十分代替出来ます。同様にPCIeスロットも外部拡張マウンタを使えば大丈夫。シングルCPUであればライザーカードもかなり余白がありました(参考記事:Mac Pro(Early2009・MB871J/A・A1289)のCPUを交換してみた)。残った必要部分の中で、個人的に一番の懸念材料だったのはビデオカードです。ともすればCPUよりも大きな電力を消費する昨今の巨大なGPUカードは、そのサイズからしてどうしてもうまく立方体の中に収めるのが難しい(長いし、ファンもある)…。立方体のどの位置に配置すべきか、側面か上面か…と、そんな事をよく暇つぶしに考えてたりしたものです。

Appleの解答

ちいさ!

 そしてApple関連サイトからMac Proにまつわるアレコレの要点を抜き出してみて、今度はキョトンではなくホントに驚かされたのは、その「サイズ」でした。

これは小さい!

 円筒は円筒でも、そこはプロ仕様のハイエンドマシンを包んでいるのですから、ゴミ箱くらいの大きな円筒なのかなと思ったのだけれど、しかしこのサイズは、たぶん実物をみたら予想よりも相当小さく感じるハズ。しかし表向きの楽観な装いに反して内面では悲観の性格も多く秘めている僕は「どうせ馬鹿デカいACアダプターが必要なんでしょうよ」と想像したのですが、背面画像をみると普通の3芯ケーブルコネクタがあることからして、どうやら電源内蔵らしい。
 では内部構造は一体どうなっているのか。公式チラ見サイトで紹介されている画像をみると、これまた絶妙な配置による詰め込みっぷりです。近年、ロジックボード上はかなりスッキリしてきているし、シングルCPUであればこれはアリなんでしょう。個人的にGPUカードは2枚も要らないから、代わりに内部ストレージ(もちろんPCIe仕様のSSD)を搭載するためのコネクタを追加して欲しいと思ったりします。しかしホントにこの構造で排熱処理は大丈夫なんでしょうか?

新しいMac Pro内部。

 今年のWWDC、ハードウェアで唯一のトピックだったこの新しいMac Proに関しては既にいろいろなサイトで発売半年前予想に盛り上がっているので、それらを紹介しておきます。

 また、Mac Proに搭載されるであろうシングルCPU(IvyBridge-Eシリーズ)については先日リストが出回ったようで、価格はまだ不明ですが、現行のXeon E5(SandyBridge-EP)のリストからおよその価格設定は予想できそうです。

Proだけのものにしておくのは勿体ない

 今年のWWDC基調講演はてっきりOSX 10.9とiOS7だけで時間いっぱい使い切るんじゃないかと思っていたのですが、発売までまだ半年もあるハードウェアを事前に紹介してしまうという想定外がありました。個人的にはAppleの主要幹部を均等に露出させるため、話題の乏しかったハードウェア面でイレギュラーな要素をねじ込んだようにも思えたのですが、肯定的に見れば「Mac Proよりもっとデカい物が年末に控えている」とも言えるのかもしれません。それがテレビなのか何なのか分からないけれど、現状、さしあたって新しいiMacで十分に満足している僕はさほど期待しているワケでもなくて、それよりはAppleが苦手とする、ネットワークを使った(点的ではなく)面的なサービス(?)で何か面白いものが出てこないかと期待したのですが、それはまた来年に持ち越しとなりました。あのiTunes Radioというサービスは日本で展開出来るのでしょうか(参考記事:アップルの聴き放題サービス「iTunes Radio」は、音楽制作者を殺すのか)。

 ところで新しいMac Pro。ホントに驚くべきところは「Mac Proがまたもや存続してしまった」ということなのかもしれません。例えば2012年度第4四半期(2012年7〜9月)の報告では、Macの販売台数492万3,000台のうち、ポータブルの395万5,000台に対してデスクトップは96万8,000台に過ぎなかったという状況で(しかも、そのiMacとMac miniを含むデスクトップの内訳でMac Proは一体何台売れたのか)、まだデスクトップ型マシンに注力する必要があるのか?

 実は、あるんじゃないか。最近の各業界多方面で当たり前の「プレミアム戦略」は横に置いて、面白ろ可笑しくラテン的に妄想するに、この新しいMac Proの内部構造とコンパクトなサイズは、逆にMac miniを代替できちゃうのではないかと思ったりするのです(Mac mini 消滅)。そしてHDMI端子も装備しちゃったりなんかして、それが「新しいテレビ(もちろん4K)」を作業用モニタとしても使えるようにすることを考慮しているのであれば、その「新しいテレビ」とMac Proの組み合わせはiMacも代替し得るのではなかろうか(iMac 消滅)。つまり、デスクトップ型Macのラインアップは全て、この円筒型でひと括りにできちゃうような気がしないでもありません。CPUもGPUも安価なローエンドからハイエンドまで多くの選択肢があるし(CPUは4コアだっていいし、GPUは必ずしも2枚必要なワケでもないし)、基本ボディを共通化してしまえば、ユーザーは然程迷うことなく使用目的に合わせてCTO可能です。製品ラインアップのシンプル化は、組立てラインの単純化のみならず様々な方面で効率化を促すでしょうし、それはやがて来る「デスクトップが無くなる日(10年以内?)」へのソフトランディング準備策にもなるのではないか。

 まあ、そんなどうでもイイことを考えつつ、今は新しいiMacを如何に酷使してやろうかと企てているところです。何せ、僕の与えるヘナチョコな作業にiMacはビクともしないくらい高性能。新しいMac Proを購入する理由がどこにも見当たらないのが悲しくもあります。

今回から「フリフリのThunderbolt大作戦(第二部)」のスタートです。テーマは「小ねた」。これと言った目的もなく、もうホントどうでもイイことをダラダラと書いてゆく内容となりますが、この二部の終了のタイミングは新しいMac Pro購入時になります(いつのことだよ)。