連載第66回
2014年4月20日
DrakeのCDがiTunesのリッピングに失敗して困る

 今年はひと月にCDを買うのは一枚だけ、という酷く後ろ向きな消費生活を送ることにしたのだけれど、これが意外にも昔懐かしい音楽との触れ合い方を取り戻すことになり、今ちょっと新鮮な気分を味わっています。

 まず、月に一枚と厳しく縛ってしまうことにより、毎月大量にリリースされるCDの中から果たしてどれを選ぶべきか、当然ながら非常に悩むワケですが、これはまさに、アナログレコードを買うのに店頭の商品棚の前で手に取り、これにしようかアレにしようか、どちらをレジに持って行こうかと悩んでいた貧乏学生青春時代プレイバック状態なのです。そして、そうやって選び抜かれた1枚は、その1ヶ月の間何度も何度も繰り返し聴くことになるわけで、摩耗を避けるためハイポジ・カセットテープに録音してラジカセで聴いた、また繰り返すけど、まさに貧乏学生青春時代に逆戻りしたかのような音楽体験。畢竟その1枚とは濃密な時間を過ごすことになるのです。うん、悪くない。

 そんなこんなで先月の1枚はDrake『Nothing Was The Same [Best Buy Deluxe Explicit Version]』だったのですが、普段R&Bとかラップとかはほとんど聴かない僕がこれを選んだのは、ラジオで流れていた「Started From The Bottom」のトラックがとても良かったからです。なんか、ラッパーがチョイスしてるのが想像できないくらい暗くて、とても気に入りました。

悲鳴のようなノイズが走る

 そしていつものように外付けのDVDドライブに挿入し、iTunesにリッピング。フォーマットはAppleロスレスです。早速雑用しながらBGMに流していたのですが、アルバムの終盤に近づいたラスト前の15曲目「All Me」のエンディングで突然、

キィイイイイイーーーーーー!

と、まるで悲鳴のようなノイズが鳴り響いたのです。テープを早送りしたような、黒板をチョークで引っ掻いたような、非常に耳障りなノイズで背中が縮こまってしまいました。何かしらの演出かとも思ったのですが、そのノイズは次のラスト「The Motion」のイントロにも跨がり、これはエラーを起こしているなと分かりました。
 再びリッピングを繰り返してみたのだけれど、そのラスト2曲の切り替わる辺りでノイズが乗ります。しかし前回とは微妙に発生する位置が違う…。この時のiTunesはバージョン11.1.5で、アップデートしてから最初のCDが今回のドレイクだったので、iTunesのバグかと思いました。

 しかし、iTunesをバックアップしていた古いバージョンに入れ替えても変わらず、ケーブルを取り替えてみてもダメ。というワケで、ドライブとの相性かもしれないと別のものを使ってみることにしました。
 それまで使用していたのはパイオニアのBDドライブ、BDR-206BK。iMacやMacBook AirにはCDドライブが無いので、センチュリーの裸族の頭 IDE+SATA Ver2 HDD接続アダプタキット CRAISU2V2を介し、USB接続して使っています。今度はDVDドライブの同じくパイオニアDVR-117JBKに付け替えて試してみました。

 CDとドライブの相性問題であれば、ドライブを替えてみるとあっさり読み込めたりするもの…と期待したのですが、今度は悲鳴のようなノイズは出なかったものの、同じ例の2曲間で頻繁に音飛びがします。またラスト16曲目の「The Motion」のエンディングにも音飛びがありました。

 さて。手持ちの外付けドライブ(ホントは内蔵用だけど)はこの2台のみ。他にMac Proの内蔵ドライブを使う手もありますが、今は押し入れの奥にしまってあるので面倒です。そこでCDの読み込みがエラーになったり、非常に遅い場合の対処方法として例の技を使ってみることにしました。ドライブの斜め置きです。
 稀にとても相性の悪いCDがあった場合、この方法が役立つことがままあるのですが、今回のドレイクでもかなり上首尾に読み込めたものの、ラスト16曲目のある場所で一瞬だけ音飛びがありました…むむむ、この曲、トラックがすごく良いのでとても惜しい…。

素直な方法で成功

 ドライブの斜め置きは、手軽に試せるのでオススメです。が、今回はそれでもダメだったので、さてどうするかしばし考えてしまったのですが、そもそもエラーの原因はiTunesの取り込みと本CDの終盤エリアとの相性にあるようです。ちなみにこのアルバムは72分間あって音楽が一杯詰め込んであるのだけれど、プレス時の具合も影響してるんでしょうね。こういう事があると、音楽をCDで運ぶことの意味を問い直したくなるような…。

 さてここで、エラーが起きるのはiTunesでリッピングしている時に限るのではないか?と考えました。まずCDをドライブに挿入してMacのFinderにマウントされている状態でその中身を覗くと、普通に16曲分のAIFFファイルが見えています。問題のある16曲目のファイルだけ単独でMacの適当な場所にコピーし、それをiTunesの「ファイル>ライブラリに追加」で取り込みます。再生してみると、どうやらノイズも音飛びも無い様子。iTunes上からその曲を選らんでAppleロスレスに変換し、オリジナルを削除してリッピング完了しました。

 結局、特定のCDの特定の場所、特定のドライブの組み合わせに限って、iTunesエンコード作業との相性が悪かった…という事でした。一手間かかるけれど、素直にデータのコピーを行ってから変換すれば回避できました。が、しかしこうやって回避方法を書いてみると、また改めて音楽をCDで運ぶことの意味を問い直したくなるような…。あ、7曲目の「From Time」もトラックが暗くて素晴らしいです。

それはともかく「1ヶ月に1枚」というのは、少なくとも僕には良い音楽体験になっています。たくさん買い込んだは良いが1回だけ聴いてあとは眠っているだけの音楽が一体何千曲あるのか。そう考えるとこういう後ろ向きな消費、音楽を作る側からも悪く言えないのではないか?