連載第82回
2013年12月31日
2013 December 031

今年、通勤電車の中で少しずつ読んでいった本です。
読んだ本を人に見せるというのは恥ずかしい事とも言いますが
これまでも幾度か「あの時こんな本を読んでたのか」と懐かしい気分になった事がありますのでここは備忘として。

*amazonへのリンクが貼ってありますが、読者レビューが手っ取り早く要約を知るのに有効かと思います。もし興味を持たれたなら、ここは是非、近所のリアル書店・古本屋で探してみては如何でしょう。

父と息子のフィルム・クラブ
 『鍵泥棒のメソッド』を観た後にこれを読んだのは、偶然とは言えタイムリーでした。
◆ジョン・カサヴェテスは語る
 絶版かと思っていましたが、ビターズエンドではまだ取り扱っているようです。
◆ロバート・オルドリッチ読本
 『カリフォルニア・ドールズ』にとても感激して読んでみて、さらに感激した。

◆福島正実編 ハガSFシリーズ全10巻
 ・『千億の世界』
 ・『別世界ラプソデー』
 ・『宇宙のエロス』
 ・『おかしな世界』
 ・『ロボット文明』
 ・『破滅の日』
 ・『クレージー・ユーモア』
 ・『ミュウタントの行進』
 ・『未来ショック』
 ・『華麗なる幻想』

 以前読んだ福島正実編の短編集の印象がまだ強く残っていたところに
 偶然「芳賀書店ハガSFシリーズ全10巻初版・帯付揃い」
 を見つけたので強気の値段付けにも糸目をつけず即買い。
 捻りの効いた古典的SF短編たち、名作揃いです。

◆『ヴィリエ・ド・リラダン全集 全5巻』齋藤磯雄譯
 今年の読書でスペシャルな出来事だったのは、やはりヴィリエ・ド・リラダン全集。とりわけ「未来のイヴ 」が素晴らしいのですが、その他にも様々な発見があって、それはまた別の機会に。とりあえずこの分厚くて重量級の本5冊を通勤電車内で読み終えるのに6ヶ月弱かかりました。腕の筋肉が鍛えられたのが思わぬ収穫でした。

重厚なリラダン全集を読み終え、気分転換に何かないかと近所の書店内を散策していたら、目の前の本棚に置かれていた西川美和監督の書籍「X」が目に入ってきました。自身の映画にまつわる様々なエピソードを収めたその本
パラパラとめくってみると気軽に読めそうで、まさに「気分転換にはぴったり」と買ってみたら見事にハマりました…。とりあえず現時点で手に入る西川美和関連本を全て購入し読んでみました。

映画にまつわるXについて
 笑った。西川監督、文章巧いなあ…という発見。
きのうの神さま
 映画「ディア・ドクター」での取材体験を基にした短編集。これを読んで、西川監督の力量を知りました。
ゆれる
 映画「ゆれる」とは違った視点で見事に読ませます。
名作はいつもアイマイ
 名作についてのエッセイ、アレコレ。
その日東京駅五時二十五分発
 「きのうの神様」で感じたことなのですが、西川監督のベースになっているのは取材行動力とリサーチ能力。それらを噛み砕いて再構成する編集能力。それらがなければこの「東京駅」は書けないと思います。そして当然の事ですが、オリジナル映画創作にもその能力は最大限発揮されています(74年生まれの彼女にどうしてこの小説が書けたのだろう?と思いましたが、あとがきを読んで納得)。
ディア・ドクター×西川美和
 映画関連本。鶴瓶師匠にまつわるエピソードが読ませます。
夢売るふたり 西川美和の世界
 同じく映画関連本。

2013年終盤、ここからは特に括りをなくして、お気楽な感じで。

TOKYO音カフェ紀行 (玄光社MOOK TOKYO INTELLIGENT TRIP 5)
 やっぱり小さくて狭い空間が好き、なので。
明るい部屋―写真についての覚書
 人生初のロラン・バルト。テキストの人なのですね。
蔵書の苦しみ
 これは笑った。そして泣いた。捨てる・捨てないのせめぎ合い。
バーのマスターはなぜネクタイをしているのか? 僕が渋谷でワインバーを続けられた理由
 Bar Bossaのマスターがネットにあげていた文章がまとめられています。これも僕の中では小さい空間繋がりです。
稼がない男。
 お金儲けに興味がないというよりは、関わりたくないと思っているフリーター(男47歳)、を恋人にもつ著者が、なぜ結婚もせずこれまで付き合ってこれたのか?という内容。個人的に主人公のヨシオと近い気分で生活を送っているので、興味深く読ませていただきました。

最後にまた小説に戻ってきました。

未明の闘争
 久々の保坂和志小説。空間を描くにしても、とても好きな描写の章と、ちょっと入り込めない章の違いが確かに在る。重要なのは、名前の存在です。その繋がりで、来年はゴーゴリ「死せる魂」を読んでみたい。
天皇の料理番
 小学生の頃だったかに放映されていた、33年前のTVドラマの原作小説。僕にとっては「探偵物語」とか「ガンバの冒険」等と同じくらい強い影響を受けたTVドラマの一つ。生涯を通じてのめり込める事に出会うことの奇跡、みたいな事を、子供ながらに感じ取った作品です。ドラマの終盤、人生を決定付けたカツレツを久々に口にして涙を流す堺正章の表情(とその気持ち)が今も忘れられません。

 原作にその場面はありません。