連載第98回
2017年6月18日
P-S#424:Overture(通奏低音リテイク)
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 先日、何となくADAPTIVERBでfreezeしてみたループ音だが、ステレオ感などが気になったので、もう一度パラメーターを素の状態に調整して録り直す。素材から短い区間を切り出してループ化するのは、以前ならサンプラーを使ってループポイントをチマチマと探していたものだが、ADAPTIVERBのfreezeはワンクリックするだけで簡単に持続音化することが出来、とても感覚的である。もちろん素材に大きく左右されるし、ボタンをクリックしたタイミングと生成されるタイミングがズレてうまくいかない場合も多く、幾度も試行錯誤することになるが、そのラグはより高速なMacならいくらか改善されるのだろうか。

低音にする

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 素直な状態のループ音を作成したところで、それに幾つかのピッチシフター系プラグインを試し、理想に近い音に近づけていく。今回、そもそも「チェロ・コントラバス」部分を録り直すことになったのは、以前自分で作成したと思っていたサウンドが実はADAPTIVERBがプリセットに内包しているサンプル音源だったことに気付いたからである(ADAPTIVERBにはクワイアーやオーケストラなどの持続ループ音がサンプル音源として利用されているドローン系プリセットがある)。今、制作に取り組んでいる『P-S#424』は「元素材から生成される音響以外の新規音源は一切加えない」という制限を課している。シンセはもちろん新たにピアノを付け加えたり、フィールドレコーディングした音素材を散らしたり、ソフトウェア音源などのプラグインを使用することは禁じているのだ。だからやり直す。元素材の一部をチョップし、それを加工して「チェロ・コントラバス」部分を置き換える。結果、満足のいくサウンドが出来上がった。