連載第103回
2017年8月10日
P-S#424:通しで聴く、ひたすら聴く
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 夏である。真夏と真冬は創作意欲が著しく減退する。僕の「創作行為」は、実際に手足を動かして作業し形作る行程と、ただひたすらボーッとして頭の中でイメージするだけの行程で構成されていて、もちろんそのどちらも重要なのだが、今の季節は後者で9割以上を占める。だからその夏の到来前に実作業を行い90%くらいまでの完成度に持って行きたかったのだけれど、いつも通りなかなか難しかった。とういわけで、今はひたすら全体を通して聴くことに専念している。以下、現状における各パートの覚え書き。

 普段は小音量でもADAM A5Xを鳴らして作業しているのだが、久しぶりにAmulech AL-9628DとSONY MDR-1Aでプレイバックしてみたらかなり新鮮だった。ただ各パートの音量差は気付き難い。

1.Overture
 もう少しだけ、各要素の輪郭をシャープにしたい。個人的に一筋縄では行かない展開を予感させる不穏な気配がたまらなく良いと思っていて、世界の何処かには居るであろう同じ感覚を持つ人に届けばいいなと思う。
2.オーケストラパート
 次に続く、5年前に制作した「GATEパート」には、そのコーダ部にこのオーケストラパートのアイデア元になった音があって、今回の作業で元ネタであるGATEパートからは該当部をカットしたのだが、独立後のこのオーケストラパートは現状、まだ押しが弱いので、そのGATEパートでカットした部分を再び融合させてみるのも良いかもしれないと思った。改めて試してみたい。
3.GATEパート
 5年前のプロジェクトを若干リファインした現状で特に不満はない。他のパートとのバランスを見て細部のブラッシュアップでOKと思う。
4.ロカビリー
 GATEパートからのカットチェンジが好み。ただ改善の余地はまだ多く、ロカビリーをロカビリーたらしめた特徴的な摩擦音とボコーダー・ライクな音の配置を再考し、尺をもう少し切り詰めようかと考えている。風鈴のような音はこのパートにはそぐわないので削除する。
5.ノスタルジア(無音内包版)
 当初、このノスタルジアは爆発音とストリングス、Femaleボイスで構成したアンビエント・テクノだったが、別に作成した「無音パート」を内部に結合させて思わぬ展開を見せた。自分でも物凄く気に入っている素晴らしいパートである。現状でも何度聴いても素晴らしいが、あえて修正の必要な箇所を挙げれば、挿入した無音パートのストリングスのボリューム・コントロール、そのバックで鳴らしている効果音の配置&作り込み、エンディングの尺の再考か。
6.無限音階
 現状では早過ぎる水滴の落下するテンポを、リズムを感じ取れないくらいにもっと極端に遅くする。元々、発想のきっかけとなっていた無限音階はカット、もしくはエンディング付近ですこし混ぜる程度に抑える。そして「ロカビリー」でカットした風鈴の音をここに再配置し、「和」のテイストを強くする方向で修正をかける。いまは夏である。
7.轟音パート
 これはかなり難しい。パート単体で聴く分には何も問題はないが、全体の中で他のパートと合わせるとその音質の割には迫力に欠ける。輪郭の尖った音響をLRに振り分けて配置する案があるが、これまでと同じくらい試行錯誤しそうな予感。途中で耳が飛ぶ場面はピッチをもう一段上に上げておく。
8.ノスタルジア2
 カットチェンジしてからの冒頭20秒をカット。修正はそれくらい、他はこのままで良い。

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P-S#424:進捗(2017-08-14)

 全体を通してみて、ロカビリーとノスタルジアの接続に若干の難を感じる。そこで、以前デモ版を公開した「Outtake-2」を繋ぎに取り入れるアイデアが閃く。ロカビリーとノスタルジア両パートに共通の不穏さは維持されつつ、形態変化への違和感を和らげる効果が期待できる。現状で1時間を少しオーバーするが、なるべく1時間にうまく収めたい。

1. Overture(約6分)
2. オーケストラパート(約4分半)
3. GATEパート(約5分半)
4. ロカビリー(約5分半)
5. Outtake-2(約7分半)
6. ノスタルジア(無音内包版:約12分半)
7. 無限音階(約6分半)
8. 轟音パート(約8分)
9.ノスタルジア2(約8分)

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