このアルバムの元素材となった前作『Manafon』でも感じたことなのですが、まず買ってきたCDをセットしてスピーカーで音を鳴らした瞬間、普段はほとんど意識しないような極めて微細な「空気感」までもがそこに記録されていると気付きとても驚きました。
16bit・44.1KHzという今となっては前時代的フォーマットとも言えるCDメディアにまだこれだけの情報を乗せることが出来る、つまりここで紹介しているデイヴィッド・シルビアン『Died In The Wool』は、圧倒的に音が良いのです(付け加えると音圧を稼ぎつつも高音質を達成しています)。かつて80年代にリファレンスとして多くの人が参照していたドナルド・フェイゲン『ナイトフライ』を経て、いや、実はそれ以降90年代や00年代のリファンレスCDが何処の誰の作品になっているのかは知らないのですが、この『Died In The Wool』に出会ってからは今後、僕の中で音作りの際に目指すべきリファンレスとなるのは確実です(素人レベルで、ですけど)。
もちろん単にオーディオとして質が高いだけでベストCDに挙げたりはしません。気軽に人にオススメできるようなポピュラーなものとは全く世界を異にする音空間でありながら、一端そこに浸ればかつて経験したことのなかったような快楽を得ることが出来る。それも、繰り返し聴けばその都度新たな印象を持って再開する快楽です(そんな本作に日本の若き現代音楽家が参加しているのが誇らしい)。自分でも驚くのですが、このCDはこの1年を通して最も数多くリピート再生された作品でした。今もまるで飽きないのです。

2011-12-31 > 放談ラジオ