連載第56回
2014年3月7日
2月の電気代1,950円ナリ

 いつか我々に襲いかかるであろう気候大異変に備え身体改造計画をスタートさせて幾歳月、冷暖房を(電源の)根元から断ち、真夏の猛暑、真冬の厳寒を電気使わずして乗り切る術を身に付けてゆくうち、次第に然程汗もかかず、然程凍えもせず、つまりは「痩せ我慢」していない精神・肉体状態(お気楽な感じ)で過ごせるようになってきました。その思いがけぬ副作用として年を追う毎に月々の電気代は下がり続け、肉体改造進行度合いの明確な評価基準が無いところへ「電気代請求額」はそれを数値化する大切なバロメーターとなったのです。しかし悲しいかな小市民の当然の成り行きとして、手段であったはずの電気代節約がいつしか目的とすり替わるのに然して時間はかかりませんでした。如何にして消費電力を抑え込んでゆくか?小さな半径3mの自宅アパート生活圏で展開される(それがエネルギー自給率4%と言われる日本の未来を救う事に繋がるのだという幻想を伴う)ゲームは、確かに面白い遊びでもありました。日常使いの自宅メインマシンもMac ProからiMacを経てMacBook Airへ、さらに蛍光灯もLED電球に取り換えて臨んだ、1年のうち最も平均気温が低いと言われる如月(さらに付け加えれば冷蔵庫の電源もほぼオフ状態。おそらく、高くても部屋の室温は外気温+3℃程度なので、冷蔵庫が必要なかった)。寒さ厳しいその1ヶ月間を一体幾らの電気代でやり過ごす事が可能なのか。果たして先月分の請求は

1,950円。

 遂に念願の2千円切り。30A契約を考慮すれば、かなりのものではなかろうか。実は2月中頃には「これはイケる」という根拠なき自信がありました(スポーツマン風)。このレベルになると、もしかしたら様々な自家発電を駆使して何とかカバー出来る範囲じゃないのかしらん、とも思ったのだけれど、やはりこれはスケールメリットが効いているからこそのお値段であって、今の変換効率では、発電装置の購入費を独り暮らしの人間が償却することは難しいようです。

 ようやく目標を達成した電気代の2千円切り。繰り返しておくけれど、このお馬鹿な行為はお金の節約を目的としているわけではなく、冒頭に書いた通り、地球規模での気候変化や、地震、有事における電送線寸断の状況に順応するためのもの。しかしその改造した(もっとまともに言い換えれば「鈍感」になった)肉体は自分一人のために役立てるつもりでもありません。もしそんな最悪の状況の時、自分の身近に愛する人や可愛い子供がいたとしたら、僕は彼等より先にソコソコの暑さ程度でヘタばったり、ソコソコの寒さ程度に震えて風邪をひいて寝込んだりは出来ないのです。僕は肉体的に最後まで機能し、愛する人が暑さで参らないよう風を送り、凍えないよう身体をさすってあげなければならない立場の人間です。

 ただ、そう考えてはいても、どういうわけか結婚の予定も無ければ、まるでする気も無いというのが矛盾しているのですが、矛盾こそ人間の本質とも。また当然の事ながら、こんなワケの分からない人間をアテにするよりは、しっかり稼いでまともな結婚願望を持っている人間と一緒になるほうが幸せというものです。一体何を書いているのだ。

来月からはアナログシンセ総動員して音楽作りを楽しむつもりなので、残念ながら電気代は跳ね上がります。