連載第11回
2012年6月8日
季節外れの「K」:カブトムシ臨時同居中

 まだ20代の頃だったけれど、アルバイトから帰宅途中の電灯に照らされた夜道を歩いていたら、数メートル先の歩道真ん中にデカい何かが動いているのに気付き、子供の頃の経験上それが「カブトムシ」であることはすぐに分かったのですが、この東京にいてカブトムシに遭遇するとはまるで思いも寄らず、かなり感動したことを憶えています。しかしそれ一度だけではなく、その後も数年おきに道端でカブトムシくんと出会うことしばしば、かれこれ6回ほどはそんな遭遇があったのではないでしょうか。もちろん近くに山があるような場所でもなく、普通の住宅街なので、誰かに飼われていたものが逃げ出したとか、ブリーダーに養殖されていたものが逃げ出したとかいう可能性もあるのだけれど、でも何となく「どこか山の方から迷い出たんじゃなかろうか」と考えることにして、東京も捨てたもんじゃないな、と少し嬉しく思ったりしたものです。そうそう!そう言えば雨の日にこれまた道の真ん中でヒキガエルに2回ほど遭遇したことがあって(1匹は下高井戸の住宅街)、人間が近づいても全く動じないあの堂々とした風体にも大いに感動させられました。一体彼等は何処でどうやって生きているのでしょうか。

 さて。今日もヘトヘトになって仕事を終えアパートまで戻ると、かつてもそうであったように玄関前の通路で黒くてデカいものがひっくり返ってバタバタしている。これもまた数メートル先であるにもかかわらず、一瞬で「K」だと分かる。近づいて拾い上げ、ちょうど長袖を着ていたのでその上に乗せて部屋に入り、少し様子を観察しました。

 特にケガはしてないようだけど、ちょっと弱り気味かもしれない。羽を広げて飛ぶ気配もない。何かエサになるようなものはないかと部屋を見渡して、先日近所のスーパーで本日限り大特価のポップに釣られてうっかり買ってしまった特盛りの蜂蜜があったので、それを水で少し溶かしスポンジに吸わせ口元にあててやった。

物凄いイキオイで吸い始めた。

 よっぽど腹を空かせていたのか、ほとんど身動きせずに脇目も振らず口から例のハケみたいなもので蜂蜜を吸っています(なめている、のかな?)。写真を撮るためにちょっと場所を移動させてもまるで動じません。
 しばらくそのままにして、僕は雑務をこなし、Macを起動し、一通りニュースに目を通した後、また様子を窺うと、頭をもたげて腹をヒクヒクさせている。「やべえ、ハチミツってダメだったっけ??」と思っていたら

突然、ウンチした。

 そうか、ウンチか。それはつまり、アレだな、いわゆる「歓びのお漏らし」ってやつだな。お前なりの感謝の意思表示ってやつなんだな。オレも嬉しいよ。…オスだったな、オマエ。

 …その後スポンジの上に身体ごと移動し、しがみついて微動だにしません。ウンチはティッシュで拭きとりました。

どうする「K」

 それにしても不思議なのは、何故この季節にカブトムシ?って事なのです。まだこれから梅雨だというのに、勘違いして脱皮しちゃったというには、別に猛暑が続いたわけでもないし。これはやはり養殖されていたものなのでしょうか(ちなみに体長は5センチほどで小さいです)。でもたとえ養殖モノでもオマエは命ある生き物だよ、by ナウシカ。
 さて、問題はコイツをどうするかです。いつもなら、一通りカメラに収めたらさっさと外に放擲してしまうのですが、これからまだ雨が続きますし(コイツにとっては今はまだ寒いと思われる)、第一エサになるようなものが見つかるのでしょうか? う〜、悩む。ちなみに「K」というのはカブトムシのKではなく、加藤のKです。コイツは「加藤」と名付けました。