連載第22回
2012年12月25日
軽薄なMacたち1:軽さと薄さの抗い難き魅力について

 確かに、今年の6月Retinaディスプレイを搭載した新しいMacBook Proの15インチが発表され、発売から少し遅れて猛暑の中を電車に揺られ銀座へ出向き、その実物をアップルストアで見たときはこう思ったのです。「以前のモデルからかなり薄くなっているものの、この剛性感はなかなかのもの。端を片手で掴んで持ち上げても歪む気配すら見せない。ギラギラの光沢ディスプレイは気に入らないけど、でもコレ欲しいかも!」と。それまで長年、旧式の17インチ光学ドライブ搭載モデルを非光沢ディスプレイにカスタマイズしたものが自分にはベストだと考えていたから、この突然の転向は自分でも予想外だったのだけれど、これはひとたび新しいマシンを見れば隣に置いてある従来のマシンが瞬時に古くさく見える、というAppleデザインチームの魔術が未だ衰えることなく発揮されていることの証左なのでしょう。デスクトップ一辺倒だった僕が始めてノート型のMacBook Airを購入する気になったのも、スペックよりそのデザインが物を言ったからです。

軽さと薄さは麻薬である

 それからしばらく経ち、iPad miniの発表と同時に新しいiMacも登場。5ミリと言われるディスプレイ端の薄さは、公式サイトに大きく掲載されていた画像で初めてみた時「そこまで薄くする必要があるのだろうか?」と思わせたほど過激なものでした。もちろんそれは写真の詐術であり、背面中央部はパーツを格納するために膨らんでいるであろうことは予想できましたから、端から中央に至るまでは滑らかな曲線を描いているハズ。しかし場合によってはその曲線は、中央に向かって少し歪な経路を辿っているかもしれない…とも思いました。
 その疑惑を確認すべく、ようやく日本でも店頭展示が始まってしばらくした後、某家電量販店のアップル製品売り場へ足を運び、先行発売されていた21インチのiMacと対面しました。

 するとどうか。隣に置いてあった旧型の分厚い27インチiMac、およびほぼ同形状のThunderbolt Displayが突如としてまるでダサく見えてしまったのです。背面の膨らみなど確認する以前に、です。この魅惑的「薄さ」というヤツの正体とは一体なんなのか。そんな事を考えながら、積極的に接客してくるスタッフをかわすため程よい間隔で他製品も交互に触ったりしていたのですが、その最中にアレ?と感じたことが。15インチのMBP Retinaモデルが数ヶ月前の印象とは打って変わって手に重く感じられたのです。その重みは「これを使って作業したくないなあ」と思わせるに十分な重さ、でした。おそらくより親しみを増したMacBook Airの影響なのでしょう、この瞬間から突如として、コンピューターとしての基本性能とは別のところで「軽さ」と「薄さ」が今後の選択時における重要な比較検討項目となりました。

 そしていつの間にやら「軽薄なMac」というフレーズが僕の頭の中で繰り返し鳴ることが多くなったのです。

軽薄とは

 もちろん、ここで使う軽薄はその文字の表すまま、3番目の意味を当てます。

来年のマイMacは軽薄になる

 そろそろ、これまで約5年間使ってきたMac Proの引退の時が近づいてきた、そんな感じがします。Mac Proが引退したら、その後を引き継ぐメイン作業マシンはどれにしようか、とアレコレ考えることを楽しむ時が多くなって、そんな時に参考にする数値がマシンの「重量」であることが自分でも可笑しく思えたりします(歳は取りたくないものですな)。そしてこれを書いている時点でメイン作業マシン最有力候補に挙がっているのが、在庫がなくてどこにも見当たらない最新型のiMac 27インチモデル。そしてサブマシンは既に所有しているMid 2011年型のMacBook Airの11インチ。両者とも、そのカッティングエッジな軽薄さに惚れ惚れします。

この軽薄なMacについては引き続き、重さと、さらに消費電力の比較も加えて記事を書く予定です。軽薄さについて考えるのは、CPUの性能やThunderbolt関連周辺機器の構成を考えるのと同じくらい面白いです。