連載第4回
2023年7月10日
Minimoog Voyager
Old School

浄化作戦、本格始動。
手放すということ。

浄化ターゲットとなる「重たい物」もしくは「大きい物」という条件の両方を満たしていた存在の筆頭は、Minimoog Voyager Old Schoolだった。

鍵盤数で言えば、3オクターブ半しかない、標準的なモノフォニック・シンセサイザーのデザインなのに、アパート部屋に鎮座している時の威圧感が本当に凄まじく、まさにキング・オブ・モノシンセである。フラットな状態から斜めに持ち上げたコントロールパネルが、そのフットプリント以上の威圧感をもたらし部屋の空間を圧迫する。

今後、身体が衰えていく中で最も懸念されるのが、ヘビー重量級の物品を持ち運べなくなる事である。このminimoogは、何と16.0kgもある。カタログスペックだと18.2kgとあるが、おそらくそれは通常のVoyagerの重量で、メモリーやディスプレイなどの機能を省いたこのOld Schoolは若干軽くなっているのかもしれない(もしくは計測に使った古い体重計の誤差かもしれない)。それはともかくとして、16.0kgでも重いに違いなく、手放す対象となった。

オリジナルから進化したMinimoog Voyagerはモジュレーションのマトリクスが強化されていて、パネルを見て分かるようにモジュレーション・ソースも豊富で、FMも出来るし、ノイズで変調も出来た。ヴェロシティやアフタータッチを備えた鍵盤を使って、演奏時にも凝ったパフォーマンスを演出することも出来た。

しかし個人的な好みからは、その音色の傾向が若干、的から外れていたのも確かである。全体的に音の輪郭がまろやかで、エッジが足りない印象があった。上記のモジュレーションも、過激な音色変化は期待したほどでななく、まろやかな範疇で収まってしまう(過激なシーケンシャル「Pro-One」の発音と比較してしまう)。そして最も自分の要求に沿わなかったのは、エンベロープの切れである。計測したわけではないが、おそらく、このシンセのエンベロープのカーブはリニアで遷移している。リニアだと、残念ながら発音はどうしてもオルガンになってしまう。「Exponential」なカーブ特性である方が、音楽的で、インパクトがあり、弾く行為にリアルタイムに直接影響を与えると考えているのだけれど、その点が少し残念に感じられた。

破棄処分するわけではない。その価値を引き出してくれる新しいオーナーの元で、新しい人生を送ってほしい。