連載第33回
2012年6月11日
ユレル:その14「止まってます」

 先日、オタール・イオセリアーニ監督『汽車はふたたび故郷へ』を観てきました。あの、決して役者には近寄らず、一定の距離感を保って状況を客観視していくスタイルは相変わらず。でも個人的にはそのスタイルを初めて観た時かなり衝撃を受けて、カウリスマキの独特な演出と共に「映画ってこういう撮り方してもOKなのか!」ということに気付かせてくれたという…。そうそう、本作でも監督自身がやはり出演していて、だいぶ歳をとったけれど元気そうでなにより。個人的には監督がポロン、ポロンとピアノを弾いてる場面がまた見たかったけれど、それはナシ。

 さて、「ユレル」後半のピアノの音色をもう少しだけ傾向の違うモノにしてみたくて試行錯誤していたのですが、ついに何の発展もなく本日終了となってしまいました。こういうこともありますよ、というか、こういうことが大半なんですよワタクシ。手持ちのピアノ音源をとっかえひっかえやってみて、どうもしっくりこなくて結局最初のベーゼンに戻ってくるの繰り返し。デモからちゃんとしたミックスに録り直してみたものの、「デモの方が勢いあっていいじゃん!」って、こういうの誰でも経験したことがあると思うのですが、アレ、何なんでしょうね。適当だったヤツをきちんとトリートメントしたらつまんなくなっちゃった、ってヤツ。やっぱり最初のが一番良かったよね、ってヤツ。

 イーストウッドが映画撮るとき、ほとんどワンテイクでOK出してどんどん仕事進めていくっていうの、ちょっと分かるような気が、したりして。つづく。