連載第16回
2012年9月26日
エイジア来日公演に行ってきた(9月24日@渋谷公会堂)

 今月いっぱいで東京を離れる元祖メタル好き(?)の友人に誘われ、特に思い入れもなく然程詳しくないバンドなのに行ってきました、エイジア来日公演。オリジナルメンバー4人が昔それぞれ他のバンドで活躍していたときの音は知っているのに、エイジアとして結成されてからはテレビやラジオなんかで耳にしたヒット曲しか知らない僕はたぶん普通に融通の利かない、そこそこに真っ当なプログレ好きだと思うのだけれど、でも今回のライブに合わせこれまで一枚も持っていなかった彼等のCDを7枚ほどまとめ買いして事前に予習した僕は行儀の良いリスナーなのではないでしょうか。予習の甲斐あって冒頭から楽曲は解りましたし(最初にノリを掴めないとさすがにキツイと思う)、僕等を囲む場内の若いファン達は冒頭から熱狂して大声張り上げたりして元気が良くて、とても楽しめました。音楽を取り巻く状況は変わってもそこはライブ、生演奏はイイですなあ。

 それにしても、かつてメンバーが在籍していたバンドは好きだったのに、エイジアとなってからの音はほとんど関心が持てなかったというのも、考えてみれば不思議なものです。30年前に彼等が華々しくデビューした時も、メンバー全員が既に大成功を収めたプログレッシブなロックバンド出身ということで注目されたのですが(つまりデビュー時にもうオッサンだった)、音楽のテイストというか何というか、僕等個人の内側にはそれぞれに固有の振動数みたいなものがあって、それに共振しなければまるで反応しない…そういう意味でエイジアの音楽にはまるで共鳴することがなかったのです。それが、これまで彼等のCDを一枚も持っていなかった理由でもあって、当然僕も世間と同様、好きなものもあれば嫌いなものもある、(態度表明として)ケッ!と唾棄したくなる音楽もあるのは確かなのですが、しかし、ここは重要だと思うんだけれど、どんなジャンルのどんなに相性の合わない楽曲であっても、これまでに音楽を憎んだ事はたぶん一度もありません。

 今回と同じ渋谷公会堂で催されたイエスのライブの時と同様、観客には白髪の混じる高齢の人も多く見かけたりなんかして。そんな昔からの本物のファン達が、大好きなバンドの生演奏を大音量で浴びながら「懐かしさを楽しむ事」に罪など微塵もありません。感傷を抱いたり、幻を想い描いてノスタルジーに浸るのとは違い、目の前で今響いている音響に実時間で共振している場内の雰囲気はとても和やかでピースフルなものでした。だから僕も自然に何度も笑った。個人的には、突然始まったカール・パーマーのドラムソロ、高齢にもかかわらずツーバスの大迫力に加えユーモアもちりばめられており、見事ツボにハマって燃えました。