昨年2025年の映画は、なんと言ってもギデンズ・コー監督の台湾映画『赤い糸 輪廻のひみつ』である。見事にハマってしまい、アホみたいに繰り返し池袋の新文芸坐へ観に行った。本当にアホみたいだが、何度観ても毎回毎回アホみたいに号泣してしまい、マスクとハンカチが使い物にならないほどぐしょぐしょになって完全にキモいアホオッサンになっていた。
でもいいじゃないか。感激しているんだ、この歳になってこの映画に出会えたことに。暗い場内で人目を気にせずボロボロと涙を流して、エンドロールを迎え、そのエンドロールを眺めている時の多幸感。僕はこの「多幸感」と世間一般で呼ばれている感覚を、この映画で初めて全身で知った。少し体調が悪い日でも、映画を見終えた後は不思議とポジティブな感情に覆われて元気を取り戻したりしたし、とても気の重くなる事案が翌日に控えていたのに「大丈夫、なんとかなる」と根拠の無い自信に溢れたりした。
この映画はしかし、残念ながら配信も円盤化もされておらず、目処も立っていない。日本での上映権は昨年11月末で切れてしまい、再び観ることが叶うのかどうか全く分からない。文学的で芸術性の高い作品ならまだしも、エンタメ直球ど真ん中の台湾映画ということもあり、日本のマーケットの傾向を考えると配信の可能性は限りなく低い。だから、1度限りではなく、セリフを暗記するくらいの勢いで年に8回も本作を鑑賞しに映画館へ通い、いつも同じところで大いに笑い、毎回同じところでたくさん泣いた。
映像は8回観たこともあってかなり脳細胞に焼き込み出来たので、それを引き出すトリガーとしてサントラCDを買おうと思った。早速検索してみたのだが、なんとCD化されていないらしい。主題歌ならYouTubeにあるだろうと思って、本編映像を織り交ぜたものを見つけて何度も聞いた。
しかし主題歌だけでは満足できず、amazonで検索してみたら、amazon musicにはアルバムが登録されていた。いや、もうこれ以上アチコチのサービスに登録するのはうんざりなので、古いMacBook Airを起動し、古いiTunesで検索してみたけれどまるでヒットしない。amazon musicやspotify(どちらも未契約)には商品リスト化されているのに、Appleには未登録と言うことがあるんだろうか?ちなみにApple Musicも未契約である。僕は現時点でiCloudの50GBストレージ(150円)以外、あらゆるサブスクリプションサービス契約はしていないのだ。
失意の下、やはりどうしても印象に残っているサントラを聴きたいのでamazonでmp3を単品購入するか…と準備をしている最中、ふと、amazonの曲目リストにあるアーティスト名「SkyCastle」に注目した。iTunesで調べた際の検索キーワードは「赤い糸」「月老」「Till We Meet Again」と、普通ならこれで該当する作品が検索結果としてリストアップされるだろうものである。しかし「SkyCastle」では検索してなかった。ダメ元で再びMacBook Airを起動し、iTunesストアで「SkyCastle」のキーワードを入力してみたら、あっけなく『《月老》電影原聲帶』がヒットした。そんな事ってあるんだろうか?…と思いつつ、しかし見つかって嬉しい。今時こんな酔狂な人間も珍しいだろうが、mp3ではあるものの早速購入しローカルにダウンロード、Swinsianのライブラリに追加した。ついでに主題歌の韋禮安「Red Scarf (“Till We Meet Again” Movie Theme Song)」も買った。これで好きな時に何度でも聴ける。
どの劇伴を聴いても、この映画のシーンの数々が再び、脳内に鮮やかに展開する。そしてニヤけたり、涙がこぼれて来たりする。ところで、楽曲としてはとっても地味な小品ではあるのだが、僕が本作鑑賞中に必ず、背後に流れている音楽に聴き入ってしまう場面がある。主人公とピンク色の髪をした女の子が月老になるための試験を受けている、とてもコミカルな場面。二人が最後に投げたリングがスローモーションで頑皮鬼に向かって飛んでいくところで、弱いピアノの音が鳴り始め、そこへ柔らかくストリングスが重なってくる。二人の中で何かが変化するこの瞬間を見事に捉えた、シンプルでありながらエモーショナルな響きに大きく心が揺さぶられる。あれから半年以上が経ち、その曲を是非単体で聴いてみたい、ローカルに取っておきたいと思っていたのだが、幸運なことにそれもアルバムに含まれていた。
Track 6. 「悸動」というタイトルが付いていた。僅か1分3秒である。
2026-02-16 > 放談ラジオ



