毎度のように前回から大きく時間が開いてしまいましたが、続きです。これまでメインで使用してきたMac ProのOSXはバージョン10.6.8。10.7へのアップデートは問答無用で上書きアップデートされる(おそらく)ということを耳にしていたので、まずは現時点で問題なく安定動作している10.6.8をCarbon Copy Cloner(以下CCC)で外部HDにバックアップ。そのバックアップ先からの起動&動作確認してから押し入れに保管。その上でApp Storeで10.7.2を購入し、自動的にアップデートが開始されました。ここで上書きしているのはこれまで使用していた内蔵HDのままで、まだSSDに交換したわけではありません。念には念を入れて、再びこの10.7.2へ上書きアップデートした内蔵HDでの起動&簡単な動作確認を行います。特に今後の作業に悪影響のある問題もなさそうなので(小さな不具合は後述)、いよいよSSDにコピーしようと思ったけど、おっとその前に…。
USBメモリをリカバリーディスク代替に
10.7 Lionの特徴はいろいろあるけれど、一番大きな変更は「今回からディスクでの供給が無くなった」ということではないでしょうか。新品のMacを購入してもインストールディスクは付属しておらず、実際昨年購入したMacBook Airにも当然ディスクの類は一切付属していませんでした。では起動システムが何らかの不具合を起こした場合はどうすればよいのでしょうか?LionがインストールされているMacでは、Optionキーを押しながら起動することで、普段は隠されている最低限の内容にまとめられた「Recovery HD」をスタートアップ時に選択することができ、そこからLionのインターネットを介したフルインストールやメンテナンスを行う為のディスクユーティリティを起動することが可能です。
記事にはしませんでしたが、実は昨年MacBook Airを購入して真っ先に実験してみたのがこのリカバリー機能。Option+起動でディスクユーティリティを立ち上げ、256GBの内蔵SDDを2つのパーテーションに区切り(パーテーションを区切りたかったので、ついでにリカバリー機能をテストしてみたというのが実情)、そこからインストーラーに切り替えてインターネット→Wi-Fi経由で10.7をクリーンインストールしてみました。
半信半疑だったものの結果は1時間ほどだったかで無事完了。この経験で「もうディスクなんて要らないよみなさん」というAppleの主張の合理性に納得してしまいました。しかし内蔵SDD自体が物理的に故障し、Recovery HDも起動出来なくなった場合は困ります。そういう不測の事態に備え、USBメモリにこのRecovery HDをコピーしておくことにしました。
ところがこれまで自分が買ったUSBメモリはたったの2本。それもかなり昔に256MBと512MBのメモリを買っただけで、Recovery HDを収納するのに必要な4GBもの容量を持つUSBメモリなんて持ってませんし、一体幾らするのやらと思って調べてみたところ何と爆安ではないか!…ズッコケました。それにしても隔世の感がありますな。とりあえず大は小を兼ねるをモットーな僕は必要十分な倍の8GB USBメモリを購入しました。もし幸運にもデータが復旧可能な場合、バックアップ出来る余分なスペースがあった方が良いですし。
リカバリーUSBメモリ作成手順
1.ディスクユーティリティを起動。
2.Mac OS X Base Systemのあるdiskを選び、メニューバーから「イメージ>変換」。
イメージディスク disk.dmgをRecover HD以外の場所へ保存(通常は隠されてしまうから)。
イメージフォーマットは「圧縮」暗号化「なし」でOK。
3.Macを通常のLionで再起動。
4.disk.dmgをクリックして「Mac OS X Base System」をマウント。
5.ディスクユーティリティを起動。
6.USBディスクを取り付けて「消去」から「Mac OS X 拡張」でフォーマット。
7.「復元」タブを開き、「ソース」に「Mac OS X Base System」をドロップ。
8.「復元先」には、USBディスクの「名称未設定」をドロップし「復元」。これでUSBメモリがRecovery HDになる。
9.作業を完了したら電源を落とし、Optionキーを押しながら起動して、USBメモリからRecovery HDの認識&起動が可能か確認する。
これまでは「やっぱりメンテナンスの時の為に光学ディスクは手元にあった方がいいんじゃないか」と思い込んでいたのだけれど、今回のような一連の流れをスムーズに体験すると一瞬にしてその考えは消し飛びます。よくよく考えてもみれば、これまでメンテナンスで光学ディスクを使ったのは、大昔にMOディスクが活躍していた頃を除けば近年では数えるほどしかありませんし、そもそもコンパクトで大容量で高速なUSBメモリがあるのに面積の大きな、そして利用するのにモーター駆動のドライブが必要なディスク媒体が未だ存在しているこの状況は一体何なのかと笑えても来ます。この感覚はおそらく「音楽CDなんてもう要らない」という今の若者の価値観に近いのかな、と思ったりしました。
SSDで10.7 Lion起動、その感想
長い前フリを経てようやくSSD Crucial m4 128GBにCCCを使って10.7.2をまるごとコピー。そして一端電源を切り、再度電源を入れるとほとんどMacBook Airと変わらない感じで高速に起動しました。これまでの内蔵HDでは、気分的にかなり「待たされている」感があったので(デスクトップが表示されるまで何か雑用しようか、と思っちゃったり)、これは劇的な改善です。まあ、SSD利用下での起動スピードは既にMacBook Airで分かっていますし、Mac Proの場合は搭載メモリが多かったり、その他にハードウェアでいろいろ追加しているものがあるので、若干スポイルされているところもあるのですが、それでも起動の待ち時間が全く苦痛で無くなったのはやはり改善でしょう。さて問題は10.7にアップデートしたことによる普段使いのアプリでの不具合の有無。まずメインであるDigital Performer 7.24ですが、意外にもホストアプリ&プラグインともにこれといった不具合には遭遇しませんでした。むしろDP起動時のプラグイン読み込み時間が劇的高速化を遂げ、これまた待ち時間が短縮されたことによるストレス解消が素晴らしい改善です。もちろんDPに限らず、あらゆるアプリケーションの起動が高速化され、これまで既にSDDへ換装し終えた多くの人が「CPUをアップグレードするより効果的」とコメントしていたのにも納得できました。アドビ等その他のアプリケーションも、特に目立った不具合には遭遇しておらず、それは単に僕が全機能を使いこなせていないから気付いていないだけかもしれないのですが、まあ、とにかく大きな支障はなさそうです。
10.7 Lionでの不具合、その対処方法など
さて、それでも小さな不具合はありました。まず10.7 Lionからは、これまで旧Power PCアプリケーションをサポートしていた「Rosetta」が廃止。これにより僕の環境下では「ImageResizer」という画像リサイズユーティリティと、「Sh-Out ! My Brain」というアウトラインプロセッサが使用不可能になりました。前者の場合、最近ではAperture 3から直接Web用画像を書き出すようになったので使用頻度は低くなっていたのだけれど、PNGやTIFFなど様々なフォーマットの画像をドロップするだけでリサイズ出来る便利さを代替してくれるアプリにはまだ巡り合えていません。後者は当サイトの文章を書く際に愛用していたのですが、サポートも打ち切られて久しく、以前からあるバグも解消されぬままだったので、今回を機に代替アプリをアチコチ探しました。アウトラインプロセッサと言えば、omni outlinerやtreeなどがメジャーだと思うのだけれど、いずれも僕が求めているような構想で作られておらず、いずれもお試し期間終了前に破棄してしまっていたのですが、何処をどう辿ったのか『MacNote3』というアプリケーションに偶然出逢いました。作者曰く「シンプル、軽量で自由に使えるMacOSX用ノートパッド」とのことですが、一般のアウトラインプロセッサとは発想が異なるものの、普段の僕の使い方にまさにドンピシャ!数日試用してすぐ正規版を購入することにしました。個人の方の作成によるものなのでいつまでサポートされるか分かりませんが、ダメ元で「10.7で採用されたフルスクリーン機能に対応してくれると嬉しいです」と作者にリクエストをメールしてみたところ、ほどなくして対応版がリリースされるなど僕の中では最近好感度ナンバーワンのアプリケーションです。もちろんこの文章もMacNote3で書いていますし、というか、このサイトの文章は全てMacNote3、とにかく自宅で作成する文章はどれもこれもMacNote3を使っています。
10.7 Lionでの重い不具合:常時64ビット起動、その対処方法など
軽い不具合は上述したものくらいで大きな影響は無かったのですが、ある日DP7を使っていてふと「Universal AudioのUAD-1eカードが認識されてない」という事に気付きました。DSPの許容範囲を超えるような使い方をしていなかったので気付くのに遅れたのですが、併用している同社の「UAD-2」は問題なく認識している…。そこで、とりあえずその場で出来る確認をアレコレ試してみることにしました。カードの抜き差し、スロットの場所替え、ドライバーの更新を一通り行い、やはり認識しないということでカード自体が壊れた可能性があると考えましたが、SSD使用による弊害かもと思い、古いHDを再び載せ替えて10.6.8で起動してみると何の問題もなく認識するではありませんか。
ということはSSDとの相性というより10.7 Lionとの相性ということではないかと考え調べてみましたが、意外にもコレだ!というような記事には出会えず「僕と同じ症状で悩んでいる人は居ないのかしら。それは喜ぶべきなのか悲しむべきなのか…」と引き続き徘徊していたところ、これまた関係ない文脈で「10.7 Lionでは常時64ビット起動」であるという記事を発見。対して10.6では32ビット起動らしい。これまでまるで意識したことのないことだったのだけれど、何かを引き当てた感じがします。そこでLion起動時に常時32ビットにする方法を探しました。ターミナルやスクリプトを使うのは面倒なので自作ユーティリティ方面を攻め、ようやく「SixtyFourSwitcher 1.3」という便利ツールを発見。インストールするとシステム環境設定>その他>SixtyFourSwitcher(アイコンが懐かしい)から、起動時の32ビット&64ビット常時切り替えを設定(カギを解除してください)することが出来ます。ここで32ビット起動に設定しMac Proを再起動したところ10.7 Lion下で無事UAD-1eを認識することが出来ました。もちろんUAD-2との併用も可能です。
■補足:その後10.7.3がリリースされたと同時にアップデートしたのですが、初出時バグがあったらしく、僕の環境ではアプリケーションやプラグインのインストーラーがインストール作業を完了出来ないという症状が出ました。その後改善されたようで「Mac OS X Lion 10.7.3(11D50b)」では不具合は出ていません。
久々にベンチマーク取ってみた
一通り問題に対処して落ち着いたところで、久々にベンチマークを取ってみました。使用したのは昔懐かしいXbench1.3で信憑性は低く、数値はあくまで相対的参考程度ですが、それでも各メーカー・各製品の傾向が見て取れます。
■日立「HDS722020ALA330」→Disk Test 51.26
Sequential 117.33
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Random 32.80
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■Seagate「ST31500341AS」→Disk Test 77.88
Sequential 184.10
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Random 49.39
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■ウェスタン・デジタル「WD25EZRX」→Disk Test 94.74
Sequential 183.49
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Random 63.85
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■MacBook Air内蔵「APPLE SSD SM256C(サムスン製)」→Disk Test 323.86
Sequential 198.45
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Random 879.78
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■Crucial m4「CT128M4SSD2」→Disk Test 411.77
Sequential 256.63
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Random 1041.28
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Uncached Read 1186.82 220.22 MB/sec [256K blocks]
リードはともかく、書き込みが遅いと言われるSSDでさえこの数値。さらに加えて静音性、低消費電力、軽量さも鑑みて、もはやレガシーな回転系HDに戻る理由が見いだせなくなりつつあります(とは言え、廉価モデルのWDが予想外に健闘していてコストパフォーマンスが高く、僕の中で再評価されていますけど)。近い将来、1TBの大容量モデルが安価に供給されるようになれば、Mac Pro内蔵の4ドライブ全てをSSDに換装しても良いかもしれません。ちなみに最近m4の512GBが5万円を切ってきましたから、だいたい5年後くらいでしょうかねえ…。
以上、久々に長いレポートになりましたが、出遅れたSSDデビュー、とても良い買い物だったと言えそうです。現状のところまだ様子見で、実際のDP7作業ドライブは回転系HDなのですが、サンプル音源のストック先も作業ドライブも、いずれSSDに換装したいと考えています。
2012-04-14 > フリフリのThunderbolt大作戦!