連載第55回
2013年9月8日
Mac Proを未だに手放せない理由

 9月1日はちょうど仕事も休みだったということで、1,000円で入場出来る映画の日しか見ないハリウッド娯楽大作を観にぶらり新宿まで出かけました。チョイスしたのは2回目の鑑賞となる『パシフィック・リム』
 パシリムは既に先月、IMAXで3D吹き替え版を観たのですが、期待以上の出来栄えで自分の中で大いに盛り上がり、これは是非2D字幕版も観ておきたいと思った次第。残念ながら新宿界隈にはもうIMAXシアターは無くて、画質的には若干劣る(でもたぶん一般の人には違いは分からないと思われます)スクリーンでの鑑賞でしたが、既にストーリー展開が分かっている事もあって、よりダイレクトに画面の隅々まで作り込まれた世界観のディテールを凝視し楽しむことが出来、1度目の鑑賞よりも遥かに楽しめました(個人的には映画上映における3Dの付加価値はもうありません)。
 さて、折角1,000円で観られるのだからと、その流れで続けて『スター・トレック イントゥ・ダークネス』もチケットを取り、どっかりと席に腰を下ろして本編上映前の予告編を眺めていたら、突然、先日話題になっていたあの映像が目の前の大きなスクリーンに映し出されたのです。

Apple – Mac Pro – Cinema Ad – Mac Pro Trailer(全く新しいMac Pro劇場予告編)

 通常、映画本編上映前の前座タイムにはまず一般の商業CM映像がまとめて流れた後、今後に控える新作映画の予告編が数本紹介されるという流れなのですが(これを楽しみにしている人も多いでしょう)、この時の全く新しいMac Proの劇場専用CM”は新作映画予告編と本編上映の間(正確にはMac Proの予告編の直後、本編との間に映画泥棒CMが挿入されたのだけれど)に組み込まれていました。なので何気なくスクリーンを眺めていた人にしてみれば「一体これは何の映画の予告編だろう?」と思ったに違いありません。

 やがてこの予告編の終盤にはAppleロゴも登場し、それがAppleのCMであることは皆に知れることになるのですが、何故、今ここで「Mac Pro」なのか。ティーザー広告なら明後日には登場する新しいiPhoneのCMを打つ方が効果的なはず。なにせ映画館にはごく普通の世間一般が多く詰めかけているわけで、この場面で一部少数いるだけのプロ向けの、しかも最先端とは言えど絶滅危惧種であるデスクトップマシンのCMを打つというのは常軌を逸しているように思えます。それ故かどうか、このCM映像を眺めていた場内の人々のおクチ・ポカーン状態、まるで何が何やら分からぬといった感じで静まり返っておりました。

何気に面倒なSSD Firmware Update

 改めて今秋には登場すると予告された新しいMac Pro。しかし我が家には未だ2008年製の5年落ちMac Proが隅っこに鎮座しています。新しいiMacがやって来てからというもの、その高性能っぷりにほとんど活躍の場を奪われてしまったのですが、未だに手放さずそばに置いているのは、ちゃんとした理由があるのです。

 先日、ふと思い立ってCrucialとサムスン、PLEXTORの各サポートサイトを久々に訪問し、最新のSSDファームウェアが配布されていないかどうかチェックしてみました。Crucialの更新は無かったのですが、サムスンとPLEXTORは最新ファームがアップされていたので早速手持ちのSSDをアップデートすることにしました。

 以前自分で書いた記事を参考にしつつ、手順に沿ってダウンロードしたISOファイルをCD-RWに焼き(CD-Rは一度焼くと終わりになってしまい勿体ないので、最近は繰り返し使えるCD-RWを使っています)、CDから起動させSSDを認識させて…と思ったのですがSSDが認識されないではないか!

 CDを焼くのを失敗したのかしらんと思ったのですが(注:CDを焼く際はディスク・ユーティリティを起動し、そのメニューにある「ディスク作成」を使用すること。FinderでISOファイルを選択し、右クリックで「ディスク作成」したものは起動ディスクとして認識されません)、どうもその気配は無いらしい。以前問題なくファームウェアを更新していた時と何が違っているのか…しばらく考えて、ようやく思い当たりました。

今使ってるの、新しいiMacですわ。

 以前更新したのはiMac導入前のまだMac Proを使っていた時だった。iMacでの作業に慣れてしまったせいで、今回の更新作業には何も考えず普通に外付けのThunderboltケースとUSB3.0接続のHDクレードルを使ったのですが、それが問題だったのです。

 各メーカーから配布されているISOファイルに含まれているのはとても簡素な起動システムで、本体外部に接続されたデバイスは今では一般的なUSBですら認識出来ない模様。ましてやThunderboltなど理解不能に違いありません。改めてサムスンの解説PDFを読んでみると、更新作業のシステム要件には

Intel-Based Mac System with available SATA connection

としっかり明記されていたのでした。最近のMacのラインナップで言えば内蔵SATA接続可能なタイプ、つまりMac ProかMac mini 、薄くなる前のMacBook Proが使用可能機種ということになります。iMacはその設計上、内蔵ディスクを交換することは困難なので端から無視。しかし交換可能とは言ってもSSDのファームウェア更新のためにわざわざMac mini やMacBook Pro本体を開封してドライブを交換するのは非常に面倒。皮肉にもこれらの候補機種の中で最も作業しやすいマシンは、Mac Proなのです!なんだそれは。

まだMac Proを手放せない

 そして粛々とMac ProにSSDを3.5インチアダプタを介して装填し、問題なく更新作業を終えることが出来たのですが、こんな小さなSSDごときのファームウェア更新のためにMac Proを所持し続けなくてはならないのか(サムスンからはPC用に更新用ユーティリティが配布されているのですけどねえ)…と消沈しかけたところ、ここはちょっと見方を変えて「今後何かあった時の為の最高のメンテナンスマシン!」と考え直すことにしました。確かにMacOSX10.5から最新OSまで対応可能で、光学ドライブやら3.5ドライブ、PCIeカードなんかも搭載可能となれば、それらレガシーな部品やアプリケーションの動作確認用としてMac Proは唯一最後の万能マシンなのです。

まるでジプシー・デンジャーみたいだ!

 今回に限らず、今後も「あー手元に置いておいて良かった」と、胸をなでおろす時があるに違いないと見た。

件の劇場用CM。これから鑑賞する映画のようなハイレベルの映像作品制作に、この新しいMac Proを是非役立てて欲しいという意図があるのでしょうが、生憎パシリムもスタトレも映像技術レベルが日本のソレとは段違い過ぎて今更逆立ちしてもまるで追いつけそうもない絶望感に打ちのめされました。ちなみにパシリムは3回目もまだイケそうです。未見の方は上映中に是非。