連載第52回
2014年1月4日
客猫来る(まれねこくる)

 一日中部屋に籠ってずっとMacBook Airで作業していたらいい加減疲れたので気分転換に外の空気でも吸おうと思いベランダのカーテンを開放したら何も植えてない方の植木鉢が白く盛り上がっていて「あれ?まったく気付かなかったけど昨晩は雪が降ってたのかしらん?」と驚きつつその白い物体を眺めていたら猫だった。

猫と気付いてドン引きした。

 いや、猫が嫌いだからドン引きしたというわけではなくて、直前まですっかり「雪」だと思い込んでいたものが突然「猫」に切り替わったのでビックリして思わずのけ反ってしまったというわけなのだが、これまでベランダにはカマキリとかアシナガバチとか、雀などの小動物は来る事がたびたびあったけれど、意外にも猫(ほ乳類)の来訪は初めてなのだ。

 これは珍しい。こんなに近距離で猫を見るのも久し振りのことで、音を立てないように注意しながら観察を続けた。空いていた木製の植木鉢はちょうどサイズ的にもヤツの身体にフィットする感じ。時折小さく身動きしつつ巧みに身体をよじらせて香箱を作っている。

可愛い。

 すぐ背後にオッサンが突っ立って凝視しているのにも気付かず、姿勢を整える為にたびたび小さく動くのがまた可愛い。体勢が決まってから睡眠モードに入ったのか動かなくなったところでカメラで撮影した。

 数枚パシャリパシャリやっていると、さすがに野良だけあって気配を感じ取ったか、むくりと起き上がってコチラを見、目と目が合う。ここで初めて顔が分かるが、真っ白だと思っていたのが顔の一部に茶色の毛が混じっていてあんまり可愛くない。ビックリして飛び退くかなと思いきや、意外にも余裕たっぷりな感じで堂々している(どこかでエサを貰っているのか人間には慣れている感じがある)。ガラス窓を開けて手を振ってみると、ゆっくり後ろに下がって隣のベランダに移動し、時々警戒しながらこちらを振り向きつつそのまま見えないところに消えてしまった。せっかく陽の当たる場所で居眠りしようとしていたのに邪魔をしてしまった。申し訳ない。

名前は付けない。