値段の安さにぶっ飛んだ
4月30日、カリフォルニア州ホーソーンでテスラ・モーターズの開催した「THE MISSING PIECE(欠けているピース)」プレス・イベントで、イーロン・マスクが発表した家庭用蓄電池「Powerwall」は、予想していた以上のスペックで市販されることが明らかになりました。まず何よりそのお値段
10kWhモデルで3500米ドル(約42万円)
7kWhモデルで3000米ドル(約36万円)
これは安い!喩えるならこれまで平均200万円していた自動車市場に、高性能の軽自動車を開発して80万円で新規参入してきたようなイメージ。当サイト的に言えば、初代Mac miniが登場したときのようなインパクト。
テスラは太陽光発電の最大の課題を解決しつつある(GIZMODO)
テスラ、自動車メーカーからバッテリーメーカーへ(WIRED)
テスラが蓄電池市場に参入、家庭用では7kWhで約36万円を実現(スマート・ジャパン)
Tesla Motors、家庭用大型バッテリー「Powerwall」を発売へ 3000ドルから(ITmedia)
Teslaの大型バッテリー、発表後数日で3万8000台の予約「反応はクレイジー」とマスクCEO(ITmedia)
Teslaの3000ドルの壁かけソーラー電池で家庭の電力をすべてまかなえる(TechCrunchJapan)
Powerwall | Tesla Home Battery(Tesla Motors)
全ては蓄電池に行き着く
僕は「大振れしそうな気候変動に対応するには、自分の身体の方を改造しちゃうほうが手っ取り早いんじゃないか?」という若干捻くれたコンセプトの温暖化対策で一年中冷暖房機(エアコン・炬燵等)を使用しない変人生活をしているのですが、その恩恵としてここ数年は月々の電気代がかなり落ちて来ています。例えば直近3ヶ月の電気代はこんな感じ。
- 2月 54kWh → 2,015円
- 3月 52kWh → 1,984円
- 4月 67kWh → 2,315円
これは毎日愛用しているMacおよびその周辺機器の消費電力が、機種を交代する度に少なくなっていることが大きく、今後しばらくその傾向は続くものと思われますが、数年前、だいたい2千円前後で安定してきた時「もしかして電気を自給して生活できるレベルなんじゃないか?」と考えました。
しかし。おそらく一度でも自家発電して電気を自給してみようかしら?と考えた人は同じ壁にぶち当たるのです。それが
蓄電池
自然を利用した発電の問題点としてよく指摘されるのが「天候に左右されやすい」ということ。家庭や個人で一番楽に導入出来そうなのが太陽光発電だということはすぐイメージ出来ると思うのですが、果たして一年間のうち晴天に恵まれるのは何日間だろう…と考えると、その運用の難しさが分かると思います。その不安定さを相殺するバッファの役割を果たすのが蓄電池。企業や工場、戸建て住宅であれば専用のしっかりした蓄電池がオプションで販売されていますが、僕個人のレベルに合ったものは無いかな?…とカタログをパッと探してみて、選択肢以前にそんな商品が全く存在しないということに気付くまで時間はかかりませんでした。住宅用でも非常に高額でとても僕の月額電気代ではペイ不可能です。
基本的に電気は風呂場の水のように溜めておくことが出来ません。iPhoneのような弱電機器用であれば、リアルタイムで充電出来るソーラー・チャージャーの類が数多く売られているけれど、それでも基本はやはり「リアルタイム」、太陽が照っている時に使ってね!という縛りがある。そこで、普段仕事で不在にしている(…というか、そもそも在宅時間が非常に少ないから電気代が低額なのだが)昼間に蓄電して帰宅後の夜数時間分だけ使うというのが合理的だと誰でも考えるんだけれど、その気持ちを折ってしまうのが、これまでの蓄電池事情だったワケです。ちなみに以前、ソニーが発表した家庭用蓄電池「ホームエネルギーサーバー」は15万円だけれど、容量は約300WhとPowerwallの20分の1しかありません(スマホが30回充電、テレビが2時間半見られる程度)。つまり20倍すると300万円。
Powerwallから始まる
日本でも各地にメガソーラーが建設されましたが、それは売電が目的。彼らの収益は僕等消費者が月々の電気代から支払っています。個人的には何故か太陽光発電にロマンを感じているので、大量設置・大量導入がより高効率化を促すのであれば不満はありません。もちろん可能なら発電所から直接電気を購入したいけれど、送電の縛りもあってそれは出来ない。しかし、そもそも月々の電気使用量が60kWh〜70kWhレベル程度の生活を送っているのなら、高性能で安価な蓄電池があって、運良く晴天の日がそこそこに続けば夢の自給生活が実現出来るかもしれないのです。
その夢を叶えてくれる可能性、その第一歩はこのテスラ「Powerwall」から始まる。この安価にして大容量の蓄電池があってはじめて、太陽光発電における変換効率云々(月使用量70kWhなら、Powerwallフル充電×10回分を可能にするような高効率なソーラーパネルが果たしてこの世の中に存在するのか?)という話が僕等のような末端消費者の間で出来るのです。蓄電池が普及すれば刺激を受けて、変換技術もブレイクスルーするかもしれないし、もちろん並行してPowerwallも世代交代する度にコストパフォーマンスを上げてくるに違いありません。
でもな
ただ、現状で幾つか問題が。サイズはともかくとして、Powerwallは重い。壁掛け出来るとは言っても100kgは怖い。
そしてこれは大切なポイントなのだけれど、アパート暮らしの僕には(仮にPowerwall自体は設置出来たとしても)、そもそも太陽光パネルを置く場所が無い。根本的に全く縁のない話なのでした。
でも、でもな
しかし今後の日本において、消費者が電気の購入先を自由にチョイス出来るようになれば、アパート暮らしでも様々なスタイルで行われている再生可能エネルギーを促進する運動(↓)に参加出来るかもしれません。
っていうか、そんな小難しいことじゃなくて、単純に「BEACH WORLD」っぽくて楽しそうなんだよね、箱庭的でセコイ感じが。あるいはプレイ…というか。
※余談だけど、それにしても国土の広大なアメリカは選択のバリエーションが幾つもあって凄いですな(↓)。
イーロン・マスク、面白い
今回の発表を行ったイーロン・マスク、まだ若いのにべらぼうな大金持ち。でもそこらにいる小金持ち起業家とは全く違う何かがあるように思えるのは、手掛けてる事業がどれもクレイジーだということ。もし企画書段階で見せられたらポエムとしか思えないようなものばかりだけれど、「それ面白いな!」と魅せられるものがある。その中でも今回の「蓄電池」はとても身近に感じられるものなんだけれど、こんな意外なところから革命は起こるのかもしれない。彼が言うように、ホントに地球全体を再生可能エネルギーで充足出来るような事が起こるかもしれないな!と期待しちゃうのだ。原発の息の根を止めるのはデモ行進でも選挙でもなくて、たぶん「Powerwall」から始まる何かだ。
ー 追記:2015.05.24 ー
昨日からポリタスで原発を考える特集が始まりました。原発のみならず、現在の日本を取り巻く電力事情周辺の現状を見るのに手っ取り早い記事が集まっているので、ご興味のある方は覗いてみては如何でしょうか。まあ、デカい話は置いといて、個人的にはやっぱり蓄電池が欲しいですね。
特集:原発“新設”の是非を問う(ポリタス)
2015-05-10 > 放談ラジオ