連載第27回
2013年1月3日
How to destroy angels:ハイレゾ音源を買ってみる

 先日当ブログで紹介したピーター・ゲイブリエルのボックスセット『So』にプロモーションという名目でオマケされていた24ビット音源ファイルが僕にとって初めてのハイレゾ商業音楽ファイルだったわけですが、オマケでくっついて来たからという受動的なものではなくて、自分から進んでハイレゾ音源ファイルをゲットしようとする場合の動機にはどんなものがあるのでしょう?
 僕の旧態然とした自宅音楽鑑賞設備で対応可能なものだと、これまではCDが最も高音質なメディアでした。そんなワケで聴いてみたいアルバムが出た場合はとりあえずCDを購入する…これまではそれで何ら不満も無かったのだけれど、昨年暮れ辺りだったかにリリースされたHow to destroy angelsの新しいEPは待てど暮せど国内盤のみならず海外盤さえもCDでの販売がされなかった…のですよ。

 件にまつわる諸事情はさて置くとして、音源の乗せ物としてのCDが存在しないのならデータファイルの配信販売を頼らざるを得ないのですが、ではiTunesストアで検索してみると棚に置かれてはいるものの(↓)、どうも食指が動きません。理由は以前書いた通り、他に高音質の音源が存在するのならわざわざ情報を間引きした物にお金を払いたくは無いなあ…そんな気分というか、まあ、些細な個人的問題。ここ以外にもアマゾンでmp3が販売されていたりしますが、同様な理由で眼中に無し。

 そこでこのユニットの本家サイトに出向いてみると、当たり前のように「Store」という表記があって、そこをクリックすると商品のラインアップが出てきます。
 驚いたのは重量級バイナル盤が既にSOLD OUTしているところ。そのお値段20ドルという、今にしてみれば音に支払う対価としては結構強気な価格設定と思ったりするのですが、これも以前話題になっていた「バイナルがコンスタントに売り上げを伸ばしている」という傾向にも関連があるのでしょう。購入するとmp3のダウンロード権が当たり前のように付いてくるのかもしれません。
 さて、その左隣に置かれているDL版を見てみると、何とそのお値段たったの5ドル…。先のiTunesストアでは1,200円だったのですが、この価格差を一体どんな言い訳をして埋めれば良いかまるで思いつきません。販売ファイルの仕様は320kbpsのmp3とFLACとAppleロスレス(ALAC)になっています。ちなみにハイレゾハイレゾって言ってるけれど、mp3とは言えど320kbsなんてビットレートの高さだと、僕はブラインドテストで他のフォーマットと聞き分けられる自信は全くありません…。

 早速、購入手続きを進めてみました。するとまず目的のファイルフォーマットを選択しなければならず、ここでかなり悩むことに…。
 この記事を書き始めた時はとにかくハイレゾ音源でこのユニットの新曲を聴いてみたいと考えていたので、まあ、FLACフォーマットを落とせば良いのだろうと思っていたのですが、Appleロスレスも選べるとなると普段の運用上何かと都合よいのはFLACよりもAppleロスレス。まあ、以前試してみたXLDがあれば相互に行き来出来るので問題はないのだけれど、変換作業やファイルの管理が面倒と言えば面倒…。

 悩みに悩んだ揚げ句、今回はAppleロスレスをチョイス。手続きを進めてほどなくして表示されたDLボタンをクリックし、目的の音楽ファイルを手に入れました。

なるほど!いろいろ学んだ初めての音楽ファイルDL

 しかし、ここで自分の思い込みによる勘違いが発覚しました。ローカルに保存されたAppleロスレスファイルをXLDでWAVに復元してみたところ、このファイルは何の変哲もない16ビット/44.1KHzというCDフォーマットの音源だったのです。
 考えても見れば当然というか、サイトにも特別に仕様表記は無かったし、仮にもしハイレゾ音源だとしたらそれを大きく強調するハズです。同じロスレスファイルということで、FLACバージョンを選択しても内容は同様に違い有りません。フォーマットを2種類置いたのは単にユーザーの使用環境への配慮なのでしょう。

 記事タイトルの「ハイレゾ音源を買ってみる」という趣旨からは大きく逸れてしまう結果になってしまいましが、今回はエレクトリックな内容ということもあり、個人的にはCDフォーマットの音源でも全くリスニング上の問題はなく、iTunesで1,200円支払うよりは半額以上も節約出来て満足なのだけれど、ハイレゾ音源をネットで買ってみるという課題は残りました。これはまたいつか頃合いを見て試してみたいと思います。何せ「買ってみたい音楽」という先立つものが必要ですから、そんな作品との出会いが来るのを気長に待つことにします。

 ただ、今回それ以外に大きな収穫があったのは確か。小売りを経由せず、作品を創っている人から直接作品を買うというのは、意外に気分が良いという発見です。

ちなみにvimeoで公開されている「Ice age」のMVで、途中、脇でグリーンのモニターをいじってる箇所、この機材はPPG Realizerです。世界に2台しか存在しないというこの元祖ヴァーチャル・デジタル機材を実際に動かしているというのは相当マニアックで個人的にグッと来ました。最後に5.25インチフロッピーディスクを抜き取る演出も良し。