連載第21回
2012年12月1日
データを残すということ:NAS向け WD RED(WD30EFRX)購入

 ハードディスクはただの消耗品。そんな何時どのようなタイミングで壊れるか全く予想がつかないパーツに、僕たちはとても大切なデータを預けています。ええ、壊れましたよ久し振りに。いつものように唐突に。
 今月の初め頃だったか、普段の音楽作りに使用しているサンプル音源の素材をストックしていたHDが突然認識されなくなりました。アレコレ自分に出来る範囲で修復を試みたものの、残念ながら再びデスクトップ上にマウントされることなく、そのハードディスクはMac Pro本体から撤去されることに。幸い、以前書いたように手動で二重のバックアップは取っておいたので大事にはならなかったのですが、消耗品とは言えモノが壊れるというのはそれなりに気が滅入るものです。
 しかし、長くコンピューターと付き合っていればこの程度のトラブルは周期的にやってくる恒例イベントのようなもの。代わりにまた今後3年間くらいは無事働いてくれるような、今一番信頼のおけるハードディスクはどのメーカーのどのような製品なのだろうか…としばらく価格やユーザーのレビューなどを比較し吟味しました。これまた不思議なことに、いつか必ず壊れる「モノ」に記憶を託す際の拠り所となるのは、実はまるで根拠の無い勝手な「信頼」だったりするのです。

 そして今回その信頼の向いた先にあったのはウェスタン・デジタルがNAS向けと謳う「WD REDシリーズ」の容量3TBタイプ、WD30EFRXでした。どこがどういう理由で「NAS向け(?)」なのかというのはメーカーが主張しているだけで、製造上の技術など明確な根拠は何ら公開されていない様子。つまりその主張を「信用」するかどうかは消費者の判断に委ねられているのですが、昨年タイの洪水発生前に購入した同社の2.5TBのものが今のところノントラブルで、性能も予想外に良かったこともあって、継続して同社製品を購入しておこうと考えた次第です。ちなみに購入時の価格は12,768円。2.5TBは記憶によればその時のタイミングで7,980円くらいだったハズなので、容量と信頼性のポジションを考えれば相応の値段かなと思いました。

赤のバックアップは緑で取る

 さて、WDの「赤」を適当にパーテーション分けしてデータを分散保存した後、さらにその「赤」のバックアップを取ります(今回購入したWD REDは直接の実作業ディスクにもなる予定)。もちろん信頼性から赤を赤でバックアップするのが良いのでしょうが、何せ値段が高い…。ここは小市民的判断が優先し、赤のバックアップは「緑」で取っておくことにしました。同じくWesternDigitalの3TB、WD30EZRX/Kをチョイス。

 このWD30EZRX/KはREDと同じく1TBプラッタを使用しているため、従来の同シリーズよりも読み取り・書き込み性能がアップしていることが、既に多くのレビュー記事等で知られています。しかし届いた製品パッケージを開封し、ハードディスクに貼られているラベルを見ると型番が「WD30EZRX」と記されてはいるものの、末尾の/Kが無い…。これはもしかして1TBプラッタではない、一世代前の製品が誤発送されてしまったのではないか?

 通販で購入したこともあって、返品・交換手続きが面倒くさいなあ…と、しばし悩んでいたところ、ふと箱パッケージの底面に貼られたラベルをチラと見たら、そこには「WD30EZRX/K」と明記されているのを発見。いったい、どちらを信用すればいいのか。これが高信頼性能NAS向けを謳う「赤」との差なのか(なにそれ)。

 Xbenchでスピードを測定してみると、REDとほとんど同性能ということもあって、たぶん1TBプラッタなのだろうと考えたのですが、もう少し決め手が欲しい。その時、比較検証用にと机上に出していたWD Greenの2.5TBを手にしたら、ずっしりと重さが感じられました。この旧製品はうろ覚えだけれど、750GBプラッタだったか、つまり円盤の枚数も多く、必然として駆動機械部品も多くなるから重量があるのです。

 「重さが決め手になる」と気付きました。早速、旧製品のWD Green 2.5TBを計ってみると0.7kg(↑)。精度は適当であろう安価なデジタル体重計を使用しましたが、単純に比較できればOK。次は1TBプラッタ採用により駆動部品点数が少なくなったWD RED。100g減の0.6kgです。100gの違いは、手の感覚で差として知覚出来るんですね。

 さて、疑惑のWD30EZRX。果たして計測の結果はWD REDと同じ0.6kgでした。750GBプラッタなら0.7kgになるハズ。
 だからきっとコレは、1TBプラッタの「WD30EZRX/K」なのでしょう。そうだ、そうに違いない、OKOK。
 今回はベンチ計測などは省略しました。SSD採用以降、回転系ストレージは容量の大きさが重要でスピードは二の次になったこともあり、然程重要な事でもないかなと考えました(では何故SSDを作業ディスクにしないのかと言えば、信頼性の面で自分の中でまだ確信出来ていないからです)。でも確かにユーザーレビューで見かける通り、静音性も発熱も以前の製品と比較して大きく抑えられており、これは長期寿命を期待できると思わせるものがあります。まあ、とりあえずそう思っておく。

自分にとって大切なデータとは

 ところで、大切なデータとは何なのでしょう。当然それは人それぞれではあるのだけれど、僕にとって何よりも絶対失いたくないデータとは、恥ずかしながら「これまでに作ってきた自作曲データ」なのです。全く他人に聴かせようもない、未熟で腹をかかえて大笑いしてしまうような学生の頃の拙作や未完成品(完成する予感がまるでしない)を含めた百数十曲が、僕の中では一番大切なデータだったりします。今はなかなか捻り出すことの難しくなった、当時の、単に若さに因るエネルギーが溢れていた頃の感じが思い出されるトリガーになるというか。当然それ以外にも僕のMacには、これまで二十数年かけておそらく購入総額数百万にはなるだろう手持ちのCDからせっせとiTunesにリッピングした音楽ファイル、下手なカメラで撮影してきた写真や駄文等のテキスト、ネットで拾ってきた雑画像や雑動画、またはリリースされたばかりのバージョンの若い頃から購入してきたアプリケーションの数々、それが動作する古いOSなどは、もちろん「いつか何かあった時、役に立つに違いない」という程度に大事なデータではあるけれど、しかしプライオリティーは自作曲データには劣る。これらは「無くしたら無くしたで仕方ないな」と諦められるものなのです。でも自作曲データは、昔KORG T2 EXで作成したMIDIデータも何世代かのMacを乗り換えて未だハードディスク上に残っていたりするくらい、最後まで手元に置いておきたい。他人には全く価値の無い、どうでもよいデータなのに…です。今回購入したWD REDに真っ先に保存したのはそれら自作曲データ。また念には念を入れて、どうでもいい2.5インチHDや、先日購入したLaCieのSSDなど幾重にもバックアップを取っておきます。するといつの間にやら逆マーフィーの法則が働いて、故障しなくなるハズです、たぶん。