連載第122回
2025年3月5日
MOTU DP(11.34)のVCAトラックグループを複製した場合の挙動についてメモ

去年の後半から「JD(仮)」という曲を、体調が穏やかな時に作っている。最近3部構成にしようと考え始め、その第1楽章を「ギターパート(仮)」と呼び、それは続く第2楽章「遠くにある部屋」とシームレスに繋がっているのだけれど、シーケンスの管理が複雑になってきたので、各章で縦断的に使用しているトラックも分割し、楽章単位に分けることにした。その際、現時点で既に組み上げているVCAトラックグループをそのまま複製して、章毎に3つ切り分けようと考えたのだが、そうした場合、グループを管理しているVCAトラックとそこに内包されるトラック達の振る舞いはどうなるのだろうか?と確認してみたのでメモ。

各ギターをまとめたトラックグループをそのまま複製

現状の「ギターパート」全トラックは上図。水色のMIDIトラックはすでに書き出しているので、AUXトラックも含めて実質5本。それらをVCAトラック(ギターVCA)でまとめている。この構成で第1楽章〜第2楽章をシームレスに作成しているところを、それぞれに分割したトラックに分けたい。

まずは単純に全て複製してみる

まずはVCAトラックとMIDIトラックも含めた計8トラックを選択して複製。すると、オリジナルの右隣に複製トラックが作成される。上図で倍の16本になっている。この時、赤い矢印の複製されたVCAトラックが、各複製トラックのまとめ役になっていれば、それで終了するのだけれど、残念ながらそんなに賢く出来ていない。複製されたVCAトラックは出力先(?)がアサインされていない状態で作成され、VCAフェーダーを上下に動かしても、複製した8トラックは連動しない…。しかし、オリジナルのVCAトラックに仕込んだオートメーションは、そのまま複製されている様子。これを破棄して最初から作り直すのは面倒に思える。

複製したトラックをトラックグループにまとめる

そこで、複製されたトラックのうち、オリジナルのVCAトラック(ギターVCA)を除いた7本を選択しておいてから、VCA込みのトラックグループを作成する。

複製したトラックは第2楽章のエディット専用にするので、名称を「遠くにある部屋」とし、新規作成するVCAトラックはとりあえず最後に選択したトラックの右隣に作成させておく。この状態でOK。

ミキシングボード上では、右端にVCAトラックが新規作成されている。

この状態をトラックウィンドウと、トラックグループウィンドウ(上図ではタブに格納している)で確認すると、複製した7本のトラックと、新規VCAトラック「遠くにある部屋」がまとめられているのが分かる。この時点で、VCAトラック「遠くにある部屋」のフェーダーを動かすと、グループにまとめている8本のフェーダーも連動する。しかし、ここで使いたいのは、「まずは単純に複製してみる」でオートメーションを書き込んでいるオリジナルから複製したVCAトラック(ギターVCA)である。

そこで、新規で追加したVCAトラック「遠くにある部屋」のアサインを「無」に切り替え、既存のVCAトラック(ギターVCAの複製)を「夢」→「遠くにある部屋」に切り替える。すると、このVCAフェーダーに複製された7本のトラックが連動するようになる。これで、当初想定していた状態に分割できた、…のだがしかし、まだ問題が残る。

AUXバスは複製されない

オリジナル8本から複製した8本には、AUXトラックも含まれている。作成中の「JD」は、生音よりもエフェクト・センドに利用しているAUXトラックの方が重要だったりする。しかしAUXトラック自体は複製されているのだけれど、内部的なAUXバスは複製されないのである。

上図のように、バス設定は以前のまま変わらす、こちらの都合に合わせて複製などしてくれてはいない。これは仕様としても当たり前だと思うから、こちらで新たに対応するバスを追加し、ミキシングボード上でルーティングし直さなければならない。ここまで来ると「管理が面倒だから」と始めた変更が、余計に面倒な作業を生んでしまっているのではないかと考えなくもないけれど、幸い、AUXトラックは3本しか使っていないので、さほど手間はかからない。

3本のAUX用バストラックを追加して、判別しやすいように「第2」を接頭に付記しておく。合わせて、ミキシングボードの方でも、各アサイン先を変更しておく。

トラックグループに後から新規トラックを追加する

実はここからが本稿で一番書き記しておきたかった本題である。既存のトラックグループのどれにも属していないトラック(作業後半で新規追加した、最初にトラックグループする際に含めるのを忘れていた等)を、どれかのトラックグループに追加したい場合はどうするのか?

追加手順メモ

1.まず、追加したいトラックを先に選択した状態にしておく。

2.追加先となるトラックグループの名称部分をクリック。
3.ミニメニューから「選択域をグループに追加」を選択。

これがポイントなのだけれど、トラックウィンドウでのトラック選択と、トラックグループウィンドウでの追加先の選択を同時に行なっておいて初めて、ミニメニューが選択可能となる。どれだけ分かり難いんだよ!

4.トラックグループに追加されたことを確認。

トラックグループは、管理下のトラックを一括でミュートしたり、オートメーションをOFFにしたり、作業中にはとても便利な機能で重宝している。

実はこの手順を知るまでにかなり時間を要した。公式サイトを探しても目的のFAQに該当するものは分からなかったし、ググってもヒントやTIPS紹介になかなか遭遇しなかった。おそらく、こんな事案で悩んでいる人が少数か、トラックグループ機能がさほど使われていないか、そもそも今となってはMOTU DPのユーザーが減少しているのかもしれない。で、昨年の12月頃だったか、ようやく追加方法を記したDPユーザーのブログ記事に辿り着き、上記のような手順で解決したのだけれど、その記事をブックマークしたはずが行方不明で、見つかったら関連リンクとして掲載しておきたい。