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放談ラジオ

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放談ラジオ ― 連載第30回

The Crimson ProjeKct 来日ライブがマジで素晴らしかった

2013年3月17日  

 昨年暮れ近くだったかに友人から誘われた「The Crimson ProjeKct」のライブを見に、昨日3月16日、川崎はクラブ・チッタへ行ってきました。しかし今回のライブの件、まるでノーチェックだったというか、近年はクリムゾン方面から少し離れていたこともあって勧誘された当初はどうしようか返答に迷ったのだけれど、友人はかなり楽しみにしているようだし、この頃は人から誘われなければ自ら外出する機会も作らない人間になってしまったので、こういうイベントに参加するのも何かしら刺激があるかもしれないと同行することにしました。それにしても「来年の3月公演だからまだまだ先の事だな…」と思っていたのがついこの間のことのようで、日々時間の過ぎるスピードは衰えるどころか益々加速していることに少し恐怖を覚えたりします。

 そんな感じですから、僕のこのプロジェクトに対する関心は以前から少々醒めたものがあって、今回のライブへの期待値もかなり低めに設定されていました。クリムゾンとは言えどキングの文言が冠されていないユニット、つまりコンセプターである中心人物ロバート・フリップの居ない派生クリムゾンの一体どこが面白いのかと。
 ところが、です。この日のライブ、冒頭の「RED」から一気に僕のテンションはレッド・ゾーンへメーター振り切り。当初の期待値の低さの反動もあって、とんでもなく圧倒的かつ「面白く」て目茶苦茶エキサイトしてしまいました。細かい事は省くけれど、近年各地で賑わっている著名バンドの再結成同窓会ライブとは全く比較にならない高いパフォーマンス・レベル(そして適度なユーモア)で、とにかく素晴らしかった。思うにその理由はどこに起因しているのかと言えば…。

フリップ翁が居ないからじゃねえか?

 フリップ先生の不在により、これまでバンドに課せられていた規律が少し緩んだことが奏効しているのか、メンバー各々のメンタル面やパフォーマンスがお気楽ラテン的に解放されている気がしました。シニカルな態度とは対極の「プレイを楽しんでいる」ことから来るプラスの盛り上がり感。まさか彼らの楽曲のプレイ中、笑う場面が幾度もあろうとはまるで予想外でした。
 
 ここでちょっと言い訳をしておくと、僕は80年代新生クリムゾン肯定派でもちろんその後の90年代メタル・クリムゾンも大好き。当然、80年代以降を肯定できるタイプに多く見られるように初期のクリムゾンも全然OKというストライクゾーンの広さを見せるのですが、個人的には『太陽と戦慄』を除く70年代の楽曲構造は若干懐メロ感を覚えたりします。しかし今回は「RED」を除くその他は全て80年代以降からのチョイス。昔から繰り返し幾度となく聴いたこれらの曲が、驚くべき事に今回改めて聴いても「全く古さを感じさせなかった」というのが、また目の覚めるような新鮮さでした。というか、リマスターされた最近の40周年記念CDを聴いてもやはり避けられない80年代特有の音の軽さはあって、それが不幸にも当時の新生クリムゾンに対する評価減に影響を与えていた部分も多々あると思うのだけれど、例えばビル・ブラッフォードが引退したことは、大好きなドラマーだったから非常に残念ではあったけれど、後継のパット・マステロット特有のビルとは対照的なサウンドとリズム感の「重さ」が意外にも今回、ライブ・パフォーマンスに寄与したところは非常に大きかったと感じます。この全体的な重低音の盛り付け感が、軽いと批判された80年代の楽曲を見事現代向けに蘇らせていたのです。とにかく、彼らの80年代の楽曲は創造された瞬間から、当時の時代感とまるで距離を置いていた独特の素性がポイントで、今回も演奏された「Sleepless」なんて、ドスの効いたバスドラ4つ打ちとレヴィンのフィンガー・スティックによる速弾き(たぶん。当時はディレイを使った疑似だったケド)と相まって強烈なダンス・チューンに生まれ変わっていました。これは聴いている僕も自然に身体が動いてノリノリになるワケだ。ラテンだ(いや、ラテンとは言っても音はすんごいディストーションしてハードだったよ)!

野口五郎メソッド、みたいな

 ところで、会場では今回の来日公演の内容が同時録音され、それがオフィシャルCDとして限定販売されるという告知がされていました。僕はこういうサービスを今回初めて目にしたのですが、以前話題になった野口五郎メソッド(勝手にそう呼んでいる)の「でもちょっと古い世代向けに修正したバージョン」みたいで、なかなか面白いのではないかと思いました。自分がその場に居合わせた時の空気感なんかのパッケージングというのは、まさにデジタル世代に向けた感覚のサービスだと思うのだけれど(ライブ後、即iTunes配信というのもありますよね)、アナログ世代の僕もちょっと興味があったので当日分を注文(予約分は2,500円ナリ)。今回の来日3日分それぞれ1000枚限定プレスということで、とりあえず16日収録分を聴いてみて、収録状況やマスタリングが良ければ他日分も検討してみようかなぁ…と思ったりしました。ちなみに1995年に来日したキング・クリムゾンの中野サンプラザ公演を僕は見に行ったのですが、後日それを収録したレーザー・ディスクが発売されたので記念に購入し手元に残しています。つまり、やろうと思えば昔から可能なサービスではあったのでしょうが、デジタル時代のスピード感(そして権利関係の緩み感)が寄与してようやく実効的になったのかな、という感じです。

その他気付いたことなどメモ

 以前に何度も書いた通り、僕はもうスタンディングでライブを鑑賞することが身体的にキツくなって久しいのですが、16日の公演ではパフォーマンス中、観客全員が大人しく座席に鎮座したままステージを凝視(アンコール前後を除く)。用意されている座席の間隔が前後左右に狭くて余裕がないこともあるのかもしれませんが、この日本人特有の禅めいた静けさは非常に助かりました(アーティスト側はどう感じるのか微妙だけれど、こういう日本人特有の性向は海外でも知られた事なのでしょう)。おかげで前座席の背の高い人が邪魔になることもなく演奏を味わうことに集中できましたし、当日は若干体調不良の感じがあったけれど最後まで楽しむことができました。

 トニー・レヴィンのカメラ好きは相変わらずのようで、ステージの合間に一眼レフ片手に観客席側をパシャパシャ撮影してました。それにしてもレヴィンのファンは多いですな。メンバー紹介時の拍手も一番大きかったようです。スティングレイ&スティックのプレイも最高にカッコよかったぞこのハゲ!

 エイドリアン・ブリューは今年再始動するらしいナイン・インチ・ネイルズのライブに参加するようです。例えばアルバム『ゴースツI-IV』でブリューの参加している楽曲を聴くと、サウンドからしてほとんどクリムゾンみたいになっていて、トレント・レズナーの得意とするエレクトロニクス面との親和性もかなり高く、もしかしたらそこから新しいサウンドも生まれるのではないかと期待してしまいます。ちなみに大好きだったTelfon Tel Avivのヨシュア・ユーステスが参加するのも感慨深いです。

追記:本日17日の公演も無事終了したようなのでセットリストをアップ。17日は15日・16日の演目全曲を演奏した模様(曲順などは未確認)。ということは上述のオフィシャルCD,15&17日分も早速注文すべきか!?(さらに追記:追加注文した)。

うん、とにかく行って良かったと思えるライブでした。CDで聴くよりも、もっと過激で斬新に現代版に進化したバージョンがライブでパフォーマンスされる。なかなかそんなバンドは居ないと思います。そして作って発表した時は、ヤンキーな一般大衆から「変な作品」と言われちゃうモノほど、後年永く生き残る可能性が与えられるのだと思いました。ところで、ステージ上に2台もラップトップがあったのは時代を感じさせますな。