まわるフリフリのフリ
僕はアップル様が嫌い

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僕はアップル様が嫌い ― 連載第3回

『Touch Bar』って何すか?
※フィジカルコントローラーの方がええよ

2020年8月12日 

思えばMac関連情報を追う事から気持ちが離れたきっかけは『Touch Bar』だった。2016年、もう4年前まで遡る。それまで認めていたApple関連記事は、そのタッチバーなるものの登場で断たれた。
壮大なる『hello(again)』のキャッチコピーを掲げ「素晴らしすぎ!こんな発想ってApple以外に誰か出来る?」みたいな大仰な演説を伴って舞台に現れたTouch Barから受けた印象はその時の記事に僅かなスペースだけ割いて書き残してある。

何かの操作を行う際に視線がメインモニターから一度離れてしまう…という1点で個人的にTouch Barは「こんな企画、よく通ったな(権力を持った人が適当に考えてゴリ押ししたのか)」という愚策に思えたが、一庶民として評価の判断を間違えることが有るという可能性については常に意識しておきたい。もしかしたら礼賛している人(特定の業務遂行については極めて便利であるとか)も居るのかもしれない。例えば常人が掬えぬところから価値を掬い取ることにかけては天から授かり受けた能力を持っていると言って良いライター、林信行氏の記事なんかは当時どのような内容の記事を書いたのだろうかと探して目を通してみた…。
すると、意外にも評価保留にしてあるではないか。というよりは遠回しにTouch Barの有意性に疑問を抱いている様子が伝わってくる内容だった。

物理キーがジワジワと復帰し始めた

かく言う僕も、ファンクションキーを使う状況なんて極僅かで、日本語入力時にF7とF10、音楽アプリを使う際に数個、Coda 2を使う際にF1、くらいしか思いつかない。その意味では「ファンクションキーなんてほとんど使われないのだから、マルチユースにタッチパネルで換装する」というアイデア自体は理解出来る。ただ、その実装にかかる開発コストと該当パーツ故障時の対応コストに比して(当然それらは製品価格に跳ね返る)、ユーザーがどれだけ恩恵を得られるのだろうかという点が未知数なのである。これまでほとんど使われなかったキーボード上の特別区なのだから、Touch Barに差し換えたところでやっぱり誰もアクセスしないのではないか。


※申し訳程度に表示されてる鍵盤、使う?↑

繰り返し、ツールが実務においてどのように評価されるのかは作業当事者の意見を聞くのが真っ当であろうとは思う。しかし残念ながら自分がリーチ出来る周辺には、iPhoneを常用しつつも、実務でMacをメインに使っているユーザーは皆無である。世間でのTouch Barの評価はどのようなものなのだろうか(本当は全く関心無かったけど)…と再び思い始めた矢先、そのゾーンは突然時間を逆行し始めた。

昨年、2019年11月に発表されたMacBook ProでESCキーが復活し、Touch IDキーはスペースを設けて完全独立キーとなった。Touch Bar自体はその場所に留まったが、相当数のユーザーからの「ESCキー無いと困る」というフィードバックを受けたことは想像に難くない。

フィジカルコントローラーの方が便利じゃないのか?

タッチパネルで触れるのが未来っぽい(かつ部品点数が抑えられてコスト削減になる)、という発想は昔からあって、今世紀に入ってからだとその筆頭はiPhoneなのだが、近年電子楽器の分野でもボタンやスイッチをほとんど全て液晶パネルに置き換えた奇抜な製品(オーディオミキサー分野にもあるし、iPadで再現するアプリもある)はあったりする。しかしそれはお世辞にも使い易いとは思えない(ここまで書いてふと気付いたが、この手の発想は経営層のウケが良く、企画が通り易いのかもしれない)。

同時に以前から、各業界向けに専用のフィジカルコントローラーは多種多様に販売されており、それらを使う方が圧倒的に使いやすいと思う。カーソル移動⇒選択、連続した数値変更などの操作なら、Griffin PowerMateのようなダイアル式コントローラーの方がシンプルに操作を憶えられ、圧倒的に便利と考える。液晶モニターから目を離さなくても、普段その辺りに手を持っていけばOKという肉体的な慣習が作業に最も有利に働くであろうと思う。

無かった事にすることは有る得るのか?

さて、engadget日本版サイトに最近Appleフェローに昇格したフィル・シラーへのインタビューを簡素にまとめた記事があるが、Touch Barの存続に関して意固地になっている気がしないでもない。ただ「プロ顧客の苦情が多かったから」と復活理由を素直に開陳しているのは潔い。妥協するのはここまで!という折半案なのかもしれないが。

しかし将来、MacBook Proから『Touch Bar』が無くなる日がやって来るのかもしれない。革新的!などと言い出した手前、もしそれが実行されるとしたら、最短で一番踏ん切りの良いタイミングはMacBook系が全てApple Siliconに切り替わる時かもしれないが、やはりそれは早過ぎるだろう。ほとぼりも冷め、下手な言い訳も不要でベストなタイミングは、iPadOSとmacOSがMacBook系列限定という動作環境制限付きで融合し、MacBookの液晶モニターがユーザーのタッチ操作を許容するよう決断を下した時だと夢想する(この時、ハードウェアとしてもMacBook系とiPad系は融合するはず)。もちろん『Touch Bar』のことを持ち出そうものなら「何すか?それ」と、無かったことにされるのは確実だが、しかしその方がユーザーとデベロッパーには幸せなのではないだろうか。

※製品自体を丸ごと自らの記憶から消し去り「無かった事にする」事例には、Appleは事欠かない。短命に終わった非運のMacintosh『G4 Cube』もその一例と言えますな。

実はMacBook系はテストおよび緊急時バックアップ用としてのMacBook Air(2013)しか持っていない。なので勝手気ままに書いているが、気合いの入ったApple愛を持つMacBook Proユーザーは本稿を完全無視して構わない。Touch Barを右に左にコスってくれ。