連載第75回
2025年2月23日
今となってはもう2年前の事だが人生初の携帯電話(中古iPhone SE2)を買った話

事後報告になるのだが、今から2年と数ヶ月ほど前、中古のiPhone SE2を買った。当時、そろそろ限界かと感じていたiPod touch第6世代のバッテリーが遂に干上がったのだ。それを機会に、代わりになるものを考え始めたのだけれど、ちょうど同時期に全くネットの繋がっていない国内僻地の某所へ赴く用件があり、そこで何かあった場合に職場との連絡手段としてネットに繋がる機器を携帯しておくべきと考えた(というわけで、iPod touch第7世代の中古は選択肢から外れた)。

2007年に購入した初代iPod touchが16GBで48,800円。その次に買った中古のiPod touch第5世代が27000円。その次がiPod touch第6世代の整備済製品で30132円だった。今回の中古iPhoneはそれらよりも安価な23000円ほどで購入することができた。ところで、今これを書いている時点で早くも、その中古iPhone SE2のバッテリーが結構ヘタって来ている。SE2の発売が2020年4月なので、すでに5年経っているから、まあそんなものだろうと納得する。とは言っても、処分前のiPod touchはフル充電しても1時間ほどで干からびていたから、今のところSE2まだ余裕ではある。それでも、バッテリー駆動の機器は、余程最新機能が欲しいのでなければ、中古を買い繋いでいくのが良いのかもしれない。中古本体を安価に購入して、バッテリーが干上がったら交換するか、もしくは次の中古マシンに買い替える足しにでもする、とか。

左からiPhone SE2、iPod touch第6世代、初代iPod touch。

届けられた段ボールを開封し、元箱から取り出したiPhoneは、頭の中で想像していたより1回りサイズが大きくてビックリした。てっきり、それまで使っていたiPod touch第6世代と同サイズだと思い込んでいたのだ。手に持ってみるとずっしりとした重さもあった。ジーパンのポケットにすんなり収まってくれるんだろうかと思ったが、それは大丈夫だった。

大きさと重さの次に慌てたのはホームボタン。本体を手に持ってボタンを押してみたのだが、全く微動だにしない。物理的に押下出来ない。もしかして壊れているのか?ハズレを引いたのか?と思ったのだが、電源が入ってないと押した感覚が演出されない擬似的に演出する機構のヤツだと気付いたのは、しばらくした後、試しに電源を入れてからだった。ようやくボタンとしての擬似反応があった。通常のセットアップはWi-Fiに繋いで滞りなく進んだが、肝心のモデムの動作テストをしたい。

「SIMなし」の状態でセットアップ完了。

ネット回線に繋がるのかモデムの動作テスト

この世に携帯電話がもたらされてから、PHSはもちろんのこと、いわゆるガラケーとか言われていた機器に全く興味がなかったのは、電話としての機能をわざわざ外に出歩く時にでさえ「携行」していく必要性を今まで微塵も感じなかったからである。人に会うなら事前に固定電話で時刻と場所を決めておけば十分なんじゃないか。そんなわけで、携帯電話の契約はひとまず横に置いて、とりあえずモデムの動作チェックを行うのにプリペイドカードみたいな物はないのか探してみた。

しばらくネット徘徊した後、「Nippon SIM」というプリペイド型のSIMの存在を知った。日本を強調したパッケージデザインを見るからに、いかにも中国製っぽい。買い切りという潔さが気に入ったので、試しに数あるバリエーションの中から安価なものを選んで購入してみた。音声通話には使えず、データ通信のみ15GB使い切りらしい。

人生初のSIMカード。これまで、主人公が自分の痕跡を消し去るためにケータイからSIMカードを引き抜いて足で踏みつける…というシーンでしか目にしなかったSIMカード。実生活においても、他人がわざわざSIMカードを引き抜いて見せ合うような奇習はないであろう。初めて目の前にしたSIMカードと対峙して抱いた感想は「おっさんには小さすぎて扱い辛いな」。付属していたピンを使い、SIMカードを載せるトレーを引き出してカードを乗せ、元に戻し、電源を入れてみる。

「モバイル通信」をオンにしてしばらくすると、docomo回線に繋がった。画面を見て、なるほど香港の通信会社がdocomo回線をローミングで使用しているということなのか、と思った。

続いて「インターネット共有」をオンにしてデザリングをiPadを使って試してみた。なるほど、これは光回線がダウンした時に使えそうである。iPad使うと一気に15GBを消費してしまいそうだけれど。というわけで無事、モデムの動作確認完了。

その後、しばらく画面のアチコチを探っていたら、突然本体がブルブル震えてメッセージが来た。メッセージなんて使ったことが無いから「?」と思ったが、回線が無事開通して使用期限を知らせる内容だった。

その翌週にiPhoneが役立つイベントが起きた

居住しているアパートは最初期のフレッツ光回線のまま設備が古くて、VDSLがアパートの設備室に設置されており、そこから各戸で共有する「共同利用方式」。上限Maxでも100Mbpsである。インターネットへの出入り口であるVDSLが故障するとネット回線は切断されてしまう。そして数年おきに、夏の終わり頃に起こる「近所に雷が落ちて停電する」というイベントが発生した。大きな雷鳴と、一瞬辺りの電灯の光が揺らいだ感じがあってしばらくした後、Twitterの反応が停止した。ネットが切断されると、毎度とても嫌な感覚に覆われてしまうが、インターネットを使い始めてから何年経っても全く慣れない。部屋の電気は点いているから一帯が停電しているわけではなく、VDSLがショックで落ちている。そこで初めて、別回線を持っていることが役立った。iPhoneでネットに繋いだら、Twitterのタイムラインがまた読み込まれて復帰した。とは言ってもプリペイドで15GBしか使えないので、普段通りに好き放題ネットを使うわけにも行かず、時間を置いて世間の様子を伺うだけに抑制した。幸い、この時は翌日に大家さんがブレーカーを入れ直すことで復帰した。

▶︎通信インフラもメンテする人も不足しているリアル

実はその一昨年前にも同じようなことがあり、その時は非常に強い落雷で近くの広範囲の区域で大規模な停電が起きた。その余波で当アパートのVDSLも落ちたのだが、しばらく待っても全く回復する感じがなく、翌朝になってもネットは不通のままだった。これはブレーカーではなくVDSLが逝ってしまったと思い、NTTに連絡することにした。しかし!である。以前は近所のコンビニの前に公衆電話があり、幾度も自分が直接NTTに連絡して修理依頼をしたことがあったのだが、まず何よりそのコンビニが閉店してしまい、それと同時に公衆電話も撤去されてしまった。NTTと連絡を取るために公衆電話を探すイベント発生である。近所を歩き回ってやっと公衆電話ボックス(こんな場所にあったなんて!)を見つけたが、影響が大きいのか「そのままお待ちください」の繰り返しでなかなか先方に繋がらない。ようやくオペレーターに繋がって状況を知らせると、状況を調べて折り返すのでこちらの電話番号を教えてくれと言う。が、こっちは公衆電話なのだ!それを伝えるとちょっと驚いた感じの先方の微細な呼吸の動きがあり、それではと言うことでメンテナンス担当者に回すのでそのまま待っていて下さいと言う。しばらく後、担当者に代わり、こちらの状況は把握したので修理担当者を後日送ってくれることになった。ここでまたしかし、である。

4日後!!

電話回線という今や非常に重要なインフラの不具合解消に4日待ちと聞いて、ちょっとクラクラと来た。停電で影響受けた世帯が多いこともあるけれど、しかし、人が足りていないのではなかろうか。最近起きた下水管破裂による痛ましい事故など、あちこちでライフラインに関わるインフラが経年劣化を起こし始めていて、それを直す人も資材も、この日本には全く足りていないのだとリアルに感じる。若い人は驚くかも知れないけれど、昔の黒い固定電話は、地域が停電して部屋の電気が止まって真っ暗になっていても、物理的に断線していなければ、受話器を取ると「プーー」と回線が通じている発信音が鳴り、普段通りに通話出来たのである。自分自身、小学生の頃に体験してとても感動したのだが、それは凄いことだと今になって思う。銅線素晴らしい。

そして安価なOCNモバイルONE(現在は新規申し込み終了)を選択

買い切りプリペイドの15GBは使用開始してからの使用期限(180日間とか)があったり、使用開始期限の制約(○月○日までに使用開始しないとダメとか)もあるので、安いとは言え突発的タイミングで回線不通となった場合に使える状態のSIMカードを持っていないと対応できない。そこで周囲の毎月支払っている通信費用を聞き取りで調べてみると、みんな月額9000円とか7000円とか5000円とか出費しているという。さすがに臨時に使うだけのものに毎月数千円は無理、それだけあれば日高屋で餃子&炒飯のセットを7食分ほど注文出来てしまう。というわけで月額550円の「OCNモバイルONE」をチョイスした。実店舗で申し込むと手数料で3300円かかるらしいので、amazonでエントリーパッケージを購入し(300円)、届いたアクティベーションコードと確認書類(運転免許証画像を送信するのにSafariだと何度試してもエラーが起きてダメだったので、Firefoxに切り替えて回避した→困った時はFirefox)などを用意してネット越しに申し込んだ。

申し込みから数日後、OCNからSIMが送られて来たので(発送代金として433を別途請求された)、トレーに挿さっているNippon SIMと入れ替えて無事動作するのを確認。今後予期せぬタイミングで再びVDSLがトラブルを起こした場合でも、最低限度の現状報告は関係各位に取れそう。毎月550円なら保険として支出許容範囲。ただしデータ通信容量は僅か500MBしかないので、うっかりYouTubeで動画を見ようものなら一瞬で超過してしまう。メールのやり取りくらいしか出来ないけれど、トラブルが解消するまでの場繋ぎにはなると思う。

iPhoneを使い始めての所感

さて、そんわけで人生初ケータイ、スマホである。しかしおっさんになってから手にしても時既に遅し、これと言った変化がまるで無い。用途もiPod touchと全く変わらない。肝心のデータ容量も500MBしかないので、日常ではモバイル通信をOFFにしているのである。一般の人からすれば何それ?という使い方ではあるのだが、そうさせている原因の大半は老眼による小さなスマホ画面の文字の見辛さに起因している。

とまあ、こんな具合である。路上でスマホの画面を凝視してゾンビ化している人たちを迷惑と思う以前に「若くてイイな、若さは尊い」とその視力を羨ましく思う。そして驚くべきことを書き記しておくが、これまで外部から自分のiPhoneに電話を掛けて来たのは、宅配のお兄さんから在宅確認があったその1回限りである。ホラーではない。

むしろスマホがあればキャプチャーに使うのが普通じゃないの?

とにかく画面が小さいからこのガジェットを使って何かする気がまるで起きない。パソコンを持っていない学生がスマホで卒論を書いているとかネットで見かけたけれど、パソコンの代替にしようとするから無駄機能やメニューの階層化が起きたりする。割と近いうちに、例えばOpenAIがジョナサン・アイブと組んでメニュー画面一切無しの声だけでコントロールする、初代iPhoneより小型な端末(映画『her』に出てくるようなやつ)を製品化するだろうけれど、今のAppleは製品作りで迷走しているし、余りにOSの使い勝手を複雑化させてしまったので確実に出遅れるだろう。この手の話になると楽しくて、またやたら無駄に長くなるので今は止める。

で、時計とかメモの代わりじゃなくて、LINEとかその他SNS用端末でもなくて(どちらも全く使ってない)、スマホがあるならモーションキャプチャーに使ってみたいと思うのが普通じゃ無いのか?普通だよな!

mocopi公式キャラのRAYNOSちゃん

早速、SONY mocopiを使ってモーションキャプチャーをしてみた。当初、所有しているiPhone SE2は使用可能機種の対象外だったのだが、いや、行けるだろうと思って試してみたら見事機能して、なかなか新鮮な感じがあって面白かった。もっとセンサー側の性能がアップすれば、アバターを使った気兼ないコミュニケーションツールにもなりそうな気がした。

続いてiPhoneのカメラ入力を利用するモーションキャプチャーを試してみた。iPhoneに「EpocCam」をインストール、Mac miniに「Elgato Camera Hub」をインストールし、Mac mini側からiPhoneのカメラをコントロールしつつ、そのビデオカメラ入力をWebcam Motion Captureに渡すとリアルタイムでアバターが動く。これも面白い。

Mac miniに上図HubアプリをインストールしてiPhoneを簡易的なビデオカメラとしてコントロール。

以上、中古iPhone SE2を購入して2年を経た事後報告。もし政治的に大きな動きがあって、衰退国家日本から消費税が無くなったら新品のiPhone SEでも買ってやろうか…と思ったのだが、何と庶民の味方SEシリーズはディスコンとなってしまった。もちろんそんなAppleが嫌いである。

レイモンド君はまた今夏の参院選期間中に戻ってくるぜ!(予定は未定)