キング・クリムゾンの最終公演、2021年12月8日東京・渋谷オーチャードホールで全ての演奏が終わった後、ひとりロバート・フリップが万雷の拍手を送る観客に深々と頭を下げていた姿を見て、これでもう自分がライブに出かけるのも最後かな…と思っていたのだが、それから4年経ち、その最後の7人編成に参加させてもらえなかったエイドリアン・ブリューが『BEAT』なるバンドを編成して日本でライブを行うという情報を偶然にタイムライン上で見かけてチケットを取ったのが5月だったか、ライブ当日までまだ4ヶ月もあり、その期間に何が起こるかも分からない、その時にまだ東京に居るかどうかも不確定という気分であったのだけれど、気がつけば2013年5月14日のシガー・ロス来日公演以来、12年ぶりに日本武道館の前に立っていた。
本家クリムゾンがほぼ満足の行く印象で終わった後に、なんだかその傍流が横から遅れて出てきて、まだ少しは残っていた感慨を台無しにしていくのでは…というようなちょっと冷めた気持ちもあったのだが、19時ちょうどにライブが始まると、個人的にも大好きな「ニューロティカ」が1曲目で「おっと、これは意外に良いのではないか?」とすぐ考えを改めることになった。ポイントはやはり「低音」だと思う。スティーブ・ヴァイとドラムのダニー・ケアリーについては申し訳ないがこれまで参加していた作品を全く知らなくて不安要素だったのだけれど、ドラムはビル・ブラッフォードの正確な軽快さを抜いても代わりに重さに比重を置いた印象のプレイで、それが80年代の音楽特有の軽さを上書き更新している。この部分に関して実は、12年前のライブでも同じような感想を書いている(The Crimson ProjeKct 来日ライブがマジで素晴らしかった)。今回のライブで言えば、トニー・レヴィンが奏でるスティックのベース音が、これまでリアルに目の前にして聴いてきたクリムゾンのどのライブよりもエッジが効いて前に出ていて、そのベース音を耳で追っていくだけでとても楽しかった。スティックは弦を指でタップするだけなので、基本的に音圧が出にくく、全体としてペッタリした印象になるのだが(それが地面をうねるような特徴ある音色となり、魅力でもある)、これはPAなどの音響機器の性能向上が大きく寄与しているのではないだろうか。スティーブ・ヴァイのギターは前述の通り今回のライブで初めて聴いたんだけれど(もちろんラジオなどで過去に耳にしてはいたんだろうが)、80年代クリムゾンに参加していたと言っても不思議じゃないくらいに溶け込んでいた。時おり出てくるロングトーンの音色が、まさに80年代という感じだったが、嫌じゃない(当然、僕は80年代を生きてきた人間なので)。ブリューの声量も全く衰えておらず、キーもオリジナルのままだったと思う。近年のオリジナルクリムゾンでのライブではスルーされてきた「太陽と戦慄パートIII」も演奏してくれたのが嬉しかった。
▶︎セットリスト(2025.9.1日本武道館)
<第1部>
01. Neurotica ※Beat
02. Neal And Jack And Me ※Beat
03. Heartbeat ※Beat
04. Sartori In Tangier ※Beat
05. Model Man ※Three Of A Perfect Pair
06. Dig Me ※Three Of A Perfect Pair
07. Man With An Open Heart ※Three Of A Perfect Pair
08. Industry ※Three Of A Perfect Pair
09. Larks’ Tongues In Aspic Part III ※Three Of A Perfect Pair
(休憩 会場BGM:Robert Fripp / Music For Quiet Moments 33)
<第2部>
10. Waiting Man ※Beat
11. The Sheltering Sky ※Discipline
12. Sleepless ※Three Of A Perfect Pair
13. Frame By Frame ※Discipline
14. Matte Kudasai ※Discipline
15. Elephant Talk ※Discipline
16. Three Of A Perfect Pair ※Three Of A Perfect Pair
17. Indiscipline ※Discipline
18. Thela Hun Ginjeet ※Discipline
「BEAT」ライブ映像作品
ライブが終わって帰宅後にTL遡上していたら、なんとBEATが行っている今回のツアーがすでに映像作品として販売開始されたことを知った。幾つかバリエーションがあったが、YouTubeに抜粋で上がっていた映像のクオリティを見て『ライヴ~ イン・ロサンゼルス 2024 (完全生産限定盤) 』を買った。
これで2人のテクニシャンによる変化自在のギターを自宅で堪能できる。
収録されている曲を見てみると、武道館での演奏順と全く同じである。そう言えば、日本武道館では「必ず21時で音を止めなければならない」という規則で時間が足りなかったせいか、「Red」が演奏されなかったのだけれど(当日のセットリストには含まれていたらしい)、個人的には逆に80年代クリムゾンの楽曲に限定されたことで印象が良いのである。僕は、キング・クリムゾンを80年代の3部作から入った人間なので、全く嫌な感じを持っていないどころか、エスニックかつポリリズム全面展開のその時代のクリムゾンが大好きなのである。
▶︎そしてメンバーのおじいちゃん度に驚く
ところで、ライブの最中にも「この人たち、一体何歳なんだろうか…」と思っていたのだが、調べてみたら何と上の写真の数字であることを知って驚いた。ドラムは体力使うからやっぱり若そうな人だな…と思っていたのに64歳と知ってぶったまげた。最後は健康。
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2025-09-17 > 放談ラジオ






