連載第72回
2024年11月30日
2024年型 M4 Pro Mac mini を迎えての消費電力&性能対決…たぶん最終回

予想以上にコンパクトだったので、ADAM A5Xモニタースピーカーの上に置くことにした。

キャベツが高い。先日、近所のスーパーでは1玉430円だった。店員さんが作ったポップは「品薄によりキャベツが高騰しています!」と楳図かずおの漫画風に書かれており、果たしてこんなに値上がりしたキャベツはどんな人が買っていくのか、今夜はどうしてもキャベツを使わないと成立しない献立だったりするのだろうか…?と考えたりする(その日、僕は138円の小松菜を買った)。ドリップして愛飲している珈琲は内容量が40gも減ったのに100円値上げなのである。コメといいキャベツといい「いよいよマズいことになってきたな」と思う。高騰はもちろん政府与党(自公)の無策もあるが、とても静かで音を立てず、かつ人が気に留めないくらいには十分緩慢な速度で、しかし確実に地球全体を覆い包んでじっくりグツグツと茹で上げようとしている温暖化が主因であることは疑いの余地がない。そして各地で40℃前後を連日記録した今夏の狂った暑さも、まだ序の口なのだ。これからどんどん食糧は入手しにくくなるし、自給率の低さで抜きん出ている日本に住んでいるならなおさらである。

これから僕たちは、確実に飢える。

予測不能な気候変動によって、代々受け継がれ、昔ながらのルーチンで農作業していたパターンが崩れ始める。しかも地上の農作物のみならず、海洋生物にも大きな影響を与え、絶滅する種も増えるだろう。おまけにこの状況で地球上には80億人の人間がいて、増え続けているのである。地球全体がそうなるのだから、日本はいくら金を積んでも相手にもされず、極めて近い将来(たぶん、すぐそこ)、僕らは飢えの時代を必死に生きることになる。もしかしたら「もっと一生懸命働いて収入を上げ、そこらの貧乏人どもより贅沢な食生活を送るのだ」と考える人も多いかもしれないが、無い物は無いのである。最善策は食料配給だが、弱者を毛嫌いせずに公平な配給に前向きになってくれる政党はどこだろうか?と考えることの方が身を守る手段としては手っ取り早いだろう。新自由主義とか抜かして人間同士で争っている場合じゃない。

というわけで、前回から早めの約半年ぶりに、またもや「消費電力&性能対決」を行うことにした。対決とは言っても今回はM4 Pro Mac mini単独測定である。無駄に長い前置きの流れから言っても、一番の関心事はやはり消費電力、熱、空冷ファンの音になる。温暖化、少しでも進行スピードを遅らせたいよ。

比較機種と測定内容

・Mac Pro(2013)
・Mac mini(2018)
・M1 Mac mini(2020)
・M4 Pro Mac mini(2024)

実はこれを書いている時点で、上記4機種のうち、2機種は既にシーラ・ラパーナに浄化されている。だが素材やアプリケーションなど測定条件が前回と全く同じ環境を用意できたので、M4 Pro Mac mini単独での測定となる。
前回同様、サンワサプライのワットチェッカー機能付き電源タップ「700-TAP071」に、計測するMac本体のみ1台を接続して(ディスプレイや素材を保存している外部HDなどは別電源から取る)、約1時間の動画素材を1920×1080HDサイズのmp4に書き出すのに要した、おおよその消費電力ピーク値と処理時間。

前回の測定結果のおさらい

▶︎Mac Pro(2013)

Intel Xeon E5-1650 v2 3.5GHz (“Ivy Bridge”) 64GBメモリ

▶︎Mac mini(2018)

Intel Core i7 8700B 3.2GHz×6コア(”Coffee Lake”) 64GBメモリ

▶︎M1 Mac mini(2020)

Apple M1 高性能3.2GHz×4コア&高効率2.1GHz×4コア 16GBメモリ

M4 Pro Mac mini測定結果

さて、ようやく測定開始なのだが、このM4 Pro Mac miniのシステム設定にあるエネルギー設定では、3つのモード「低電力・自動・高出力」を切り替えられる。今回はそれぞれのモードで3回、同条件で試してみた。

まず、起動してしばらく経った後、アプリケーションは一切立ち上げず、デスクトップを表示しているだけの全く何もしていないアイドル状態で「4W」だった。この後、Thunderboltケーブルを使い、動画素材の入った外付けSSDケース(外部電源付き)に接続すると「7W」に上昇した。この後に続く測定結果内の「アイドル状態」は、この外付けSSDを接続した状態を指す。先に書いておくと、どのモードでもアイドル状態は7Wのままだった。

▶︎M4 Pro Mac mini(2024)

Apple M4 Pro 高性能4.4GHz×10コア&高効率2.8GHz×4コア 64GBメモリ

低電力モード
自動モード
高出力モード

割と真剣に「返品」を考えた

動画変換に要した時間という分かりやすいテストで比較すれば、順当に8コア(3.2GHz)のM1から3世代進化して14コア(4.4GHz)を持つM4 Proがそれなりの結果を示したのは当然で、その仕事の早さにはとても満足している。しかし、その結果を目の当たりにしても、両手をあげて褒めることを躊躇わせたのは、瞬間ピーク時の消費電力の高さもあるが、ボディ本体の発熱空冷ファンのノイズである。所有したことがないので分からないが、高出力時のMacbook Proの発熱や空冷ファンの音に慣れている人なら別に気にならないのかもしれないけれど、黒Mac ProやM1 Mac miniの静音性に感銘を受けた僕にとっては「退化」と感じられてしまった。小型化によって内蔵される空冷ファンも小径となり、風切り音が耳に障るようになるのは予想していたけれど、開封後の試運転でひとまず高負荷をかけた際にそれを確認し、やはりガックリしたのである。

なかなかそのことに納得できず、今回13年ぶりに新品のMacを購入したのだけれど(僕は基本的に中古買い替えが通常運転)、真剣に「返品」を考えた。が、返品期限ギリギリまで悩んで、いや、もうしばらく使ってみようかな…と思い直した理由は次の通り。

▶︎大きなメモリ空間

メモリ16GBを搭載したM1 Mac miniでも工夫すれば凌げるかもしれないけれど、やはり物理的に突破できない壁があって、チャレンジしたい事柄があるのに身の置かれた環境によってその機会を失う…という苦々しさをM4 Proの最大メモリ64GBは解き放ってくれる。今のところ、内蔵SSDをスワップするような状態には1度もなっていない。

▶︎コンパクトなサイズ

冒頭の写真キャプションにも書いたが、予想以上に実際に手にしたM4 Pro Mac miniはコンパクトだった。初代G4ミニよりもさらに2回りほど小さいという印象。この小箱が住空間に与える影響は意外に大きいのではないか。

▶︎MOTU DP11での操作感

まだプラグインなど作業環境の引っ越しが終わっておらず、「自動モード」で仮データを使って試運転しただけなのだが、M1 Mac miniよりはレッドゾーンに突入する回数が減ったような…気が…する。残念ながら完全に無くなったわけではない。CPUの使用率を示すメーターは、M1の90%から60〜70%くらいに減っただろうか?10トラックほどしかない僕の作業シーンでは「自動モード」でもファンが唸ることは無かった。総じて劇的な改善は感じられなかったのだけれど、M1 Mac miniでは「ゲームチェンジャーのM1でもさすがにこれが限界か…」と行き詰まりを感じていたところなので、いろいろ試す事の幅は広がると思う。

▶︎整備済製品が以前の価格を維持している

これを書いている時点で、もしかしたら値下げするかも…と期待していた旧型の整備済製品(M2 Pro Mac miniやM2 Max Mac Studio)の価格が以前のままである。Appleのヤツ、強気である。そんなアップル様が嫌い。

▶︎これが人生最後のMacかもしれない

当然ながら、実際のところ僕には全くMaxグレードのMacは必要なくて、Proグレードでも非常に高性能だから十分に使えそうというか、本来の性能を活かし切ることも無さそう(でもマージンは必要)。いろいろ追加して値段はそれなりに張ったけれど、新型のMac Studioが登場する来年夏まで待っている時間は無い。打ち止めにするには本機が妥当なのかも。

…とまあ、消費電力と熱とノイズの3大ネガティブ要素を差し引いて、手元に置いておく理由としてパッと思いつくのは上記。このうち、メモリと本体サイズはかなり大きなウェイトを占めている。ここまで小さくなるとコンピューターというよりはオモチャ箱なんだが、このMacを使って週末に趣味としてやっていることと言えば、他人から見たら単に遊んでいるようにしか見えないだろうし、それはまさしく、1玉430円のキャベツなんだろうなと思った。