以前、QUANTECの公式サイトが消失した…とブログを書いてから早いもので、もう1年と数ヶ月が経った。当時何が起きたのか全く判らなかったが、その理由がやっと分かった。
11月14日、突然AppleがQuantec Room Simulator YardStick をプラグイン化したという一報を聞いて心底驚いた。本当にびっくりした。門外不出のアルゴリズムがApple独占とは言え、プラグイン化されたというのは、素直に嬉しい。残念ながら今後も僕は多分、Logic Proは使わないと思うけれど(もう新しいツールに乗り換えて使用法を覚える気力が無い…)。
さて、AppStoreに掲載されている機能紹介をそのまま引用。
Quantec Room Simulator
・Quantecの創立者であり発案者であるWolfgang Buchleitnerによるオリジナルの回路図、アルゴリズム、およびコードを使って構築された唯一の本格的なハードウェアの再現を、プラグインとして利用することができます。
・これまで作成された中で音響的に最も正確なルームシミュレーション、Quantec QRSとQuantec Yardstickによるハードウェアリバーブの伝説的なサウンドを追加できます。
・音響特性を保持しながら音楽に写実的な音響空間を加えるために、ビンテージのQuantec QRSを選択できます。
・向上した明瞭さと精細さで音響空間をより正確にモデリングするために、高度なルームシミュレーションのアルゴリズムを備えたQuantec Yardstickを選択できます。
凄い、完璧である。
マニアックなプラグイン開発にオタクの存在を感じる
今回はプラグイン単体ではなく、Logic Pro 11.1アップデートに内包された形でのリリースなのでオマケ的な扱いなのではあるが、アップデートのフィーチャーとして前面にアピールしてきたのはしかし、Apple開発者の中にこのQUANTECの歴史的価値を知る、相当マニアックな人間がいるのではないか、いや、いるはずだ。
洗練されたパネルデザイン
オリジナルQUANTECハードウェアの特徴的なダイアルのデザイン(全くカッコよくない、むしろダサい)。全体の雰囲気を決定付けている、赤というよりは紫に近いLEDカラー。それらが「QUANTEC」のブランド名とロゴを纏って綺麗に配置されている。オリジナルの「QRS」と、ブラッシュアップされた近年の「YardStick」のキャラクターを切り替えることも出来る。当然、QUANTECの特徴だった「ルーム・サイズ」もある。非現実的な音響を生成する「Freeze」ボタンや、Enhanceボタンもある。主要なプライマリーのパラメーターの他に、セカンダリーというタブがあるのだが、どういう調整が出来るのかはLogicを所有していない自分には不明だが、2次反射音とかサラウンド関連設定パラメーターだろうか。如何にもドイツっぽい、あのやたらとっつきにくかったパネルのボタンレイアウトが、整然と使いやすく再配置されている。
その空間の残響が求める音楽を作りたい
古典としての歴史的価値を認めて現代にプラグインとして残す意味はあると考えるものの、しかし既に世界には数多くの優れたリバーブ・プラグインが存在している中で、今果たしてどれほどQUANTECの響きに需要があるのか?このニュースが流れた直後も、タイムライン上では機械的にコピペされたボットのツイートばかりな並び、QUANTECプラグイン化を話題にした「人間」のコメントなんて、自分の観測範囲では皆無だった。既存のリバーブで事足りているのは分かりきったことで、それはAppleも百も承知なのだろうと思う。もしかしたらLogicとQUANTECは同じドイツ生まれということもあり、単純にそれぞれの開発者が古い知り合いだったというのは、ありそうである。
個人的にも以前YardStick関連記事に書いた通り、そこに「特別な何か」を聞き取っているわけではないのだけれど、今は「先に空想の部屋の響きがあり、そこにどんな音を鳴らしていくか…という順序で音楽を作りたい」という願望がある。10代の頃に耳にした「ルーム・シミュレーション」という呼称の響きにも、心理的に大きく呼応している。
QUANTEC
間に合って良かった ※QUANTECの公式サイトがリニューアルされて…何もかも消えていた。
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2024-11-25 > Musical Instruments & Gear