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まわるフリフリの映画

これまでの映画百本全部 > 感想文書いてみた順

したたかな広報
映画本「スカイライン 征服」

したたかな広報

監督:グレッグ・ストラウス/コリン・ストラウス(2010年/アメリカ/94分)

 個人的にこの映画が失敗していると思う点を2つ挙げます。以前、ポン・ジュノが監督した怪獣映画『グエムル』の感想文にも書いたのですが、未知の怪物が突然来襲してきた場合、不幸にもそこに居合わせた者たちはただ狼狽えているだけでは駄目で、ただちにその窮状から脱するため作戦を練らねばなりません。怪獣映画では戦闘場面  

とある科学の…
映画本「トランスフォーマー/リベンジ」

とある科学の…

監督:マイケル・ベイ(2009年/アメリカ/150分)

 今となってはもうずいぶん昔のような昨年の話なのですが、第30回ゴールデンラズベリー授賞式に、同最低主演女優賞を受賞したサンドラ・ブロックが出席したというニュースを聞いて、かの国の映画産業における「バランス感覚」を羨ましく思いました。業界関係者のみの投票で決まるアカデミー賞に対し、一般市民も低額の会費を支  

素敵な歌と舟はゆく
映画本「宇宙戦艦ヤマト」

素敵な歌と舟はゆく

監督:舛田利雄(1977年/日本/146分)

 今更小学低学年時に観たアニメ映画の感想を書くなんて、その時に感じたそのまま素直な気持ちは当然ながら詳細に覚えているはずもなく、とても公平とは言えないのですが、オッサンになってから気付くあんな事こんな事も、書き連ねてみればもしかしたら暇潰しの読み物として面白いかもしれない…そう思い立ったのはもちろん、この  

小さくて長い穴の救済大作戦
映画本「ザ・ロード」

小さくて長い穴の救済大作戦

監督:監督:ジョン・ヒルコート(2009年/アメリカ/112分)

 終始、陰鬱にたちこめた雲がスクリーンを覆い、本来そこに広がりを見せるべき風景を狭く暗く閉ざしている、そういう印象を与えるせいもあり、スクリーンから得られる情報量は極端に少ないようにも感じられ、実際、記憶に今も残っているのを挙げるとすれば、「食料」「父と息子」「銃」「善と悪」くらいのもの、つまり本作は地表  

希望のフラットライン
映画本「2012」

希望のフラットライン

監督:ローランド・エメリッヒ(2009年/アメリカ/158分)

 ルパン三世のTVシリーズ2(いわゆる赤ジャケルパン)の最終話、都心でまさかの戦車発砲という派手なやりとりの後、偽ルパンに逮捕監禁された偽銭形警部が小山田マキに問い掛けた言葉は、当時まだ子供だった僕に強い衝撃を与えました。曰く、昼の騒ぎで何人死んだ?  

そして立体を目指す
映画百本「トロン」

そして立体を目指す

監督:スティーヴン・リズバーガー(1982年/アメリカ/96分)

 未だ多くの人がこの作品の中でCGによって描かれている世界観に然程違和感を覚えず、むしろ今この時代にあって新鮮ささえ感じるとコメントしているのは、それほど不思議な事でもありません。現代の映像技術レベルからすれば貧しいとさえ言えるポリゴン数、ただプリミティブな立体を組み合わせて作られている、まるで積み木遊び  

あんなフリ、こんなフリ
映画本「バレエ・リュス 踊る歓び、生きる歓び」

あんなフリ、こんなフリ

監督:ダニエル・ゲラー/デイナ・ゴールドファイン(2005年/アメリカ/118分)

 一般にブレイクの契機となったとされる、木村カエラのラジオでオンエアされた「ポリリズム」を、その時偶然耳にした事がきっかけで僕もPerfumeを知る事になったのですが、大抵の場合曲の後半に配置されるであろう、例のポリポリ言ってる盛り上がりパートが、曲はじまって早々と展開されるところに構成の新鮮さを感じ、さて、そ  

印象のはなし
映画本「ダーウィンの悪夢」

印象のはなし

監督:フーベルト・ザウパー(2004年/フランス・オーストリア・ベルギー/112分)

 ダーウィンという有名な固有名詞の使われたタイトルと、ナイルパーチという巨大な肉食の淡水魚の組み合わせで連想すると、ヴィクトリア湖におけるこの巨大淡水魚の生態異常をレポートした科学ドキュメンタリーなのかしらん…と本作の内容を憶測したのですが、実際にはまるでその主旨は異なっていました。ここにあるのはグローバ  

ニッポンのかしこい選挙
映画本「選挙」

ニッポンのかしこい選挙

監督:想田和弘(2007年/日本・アメリカ/120分)

 以前、とある地方に住む老人のおしゃべりを直に耳にしたのですが、その時の内容はざっとこんな感じ。

●自民党 とにかく、いつも自分の名前を大声で連呼している印象しかないなあ。  

氷の国の音楽事情
映画本「スクリーミング・マスターピース」

氷の国の音楽事情

監督:アリ・アレクサンダー/イルギス・マグヌッソン(2005年/アイスランド/87分)

 北欧を成す一国のアイスランドで、現在活躍しているポピュラー音楽のミュージシャン達を紹介しているこの映画を観たのは2年前だったか、すでにメジャーとなって多くの人に知られているビョークを始め、シガー・ロスやムームといった日本でも馴染みあるバンドから、それはもう初めて見るヘンテコリンなバンドまでなかなかバラエ  

これが、敵
映画本「コマンダンテ」

これが、敵

監督:オリバー・ストーン(2003年/アメリカ・スペイン/100分)

 遥か昔、人間がこの地球という丸い岩石の塊に生まれ出てから現在に到るまで、いったい幾つもの「理想」が作り出されてきたのか分かりませんが、よりよい世界の実現を目指してデザインされた理想は、考えてみればその優位性を際立たせる為、その数と同じだけの「敵」も作り出してきたのでしょう。よくよく考えてみれば国家という  

季節外れ
映画本「ファースト・ディセント」

季節外れ

監督:ケビン・ハリソン/ケンプ・カーリー(2005年/アメリカ/110分)

 そもそも、何故5月の大型連休というこのタイミングで、スノーボーダー達のドキュメンタリー映画感想文なのかと。いや、大型連休で弛緩した気分でいるからこそ、季節外れに雪山を滑空するボーダーについての話なのであると。  

中間マージンをスッ飛ばせ
映画本「おいしいコーヒーの真実」

中間マージンをスッ飛ばせ

監督:マーク・フランシス&ニック・フランシス(2006年/イギリス・アメリカ/78分)

 これを書いている今、コーヒーを飲みながらタイプしているのは言うまでもありません。僕にとってコーヒーとは、目覚めの一杯であり、仕事中の覚醒剤であり、そして一日の終わり就寝前に豆乳をいっぱい加えた〆の一杯という、ほとんどカフェイン中毒一歩手前と言ったところ。そんなコーヒーにまつわる、あんな話こんな話が聞ける  

固さとか、ユルさとか
映画本「多摩ニュータウン わたしの街」

固さとか、ユルさとか

監督:森康行(2008年/日本/86分)

 タイトルは何だったか忘れてしまったのだけれど、以前読んだ宮台真司の古い著作の中に都市には隠れ家的な空間が必要だ云々という提言があって、そこで妙に納得させられてしまったのは、確かにここ数十年の都市開発事業における「都市デザイン」的なものがあまりに画一的であることの弊害を自分自身、無意識のうちに身体で感じ取  

さらなる効率向上を目指して
映画本「いのちの食べかた」

さらなる効率向上を目指して

監督:ニコラウス・ゲイハルター(2005年/ドイツ・オーストリア/92分)

 多少勘の良い人であるなら、本編の上映開始後数分ほどスクリーンを眺めていれば、この監督が本作の制作作法として、幾つかのある制約を課していることに気が付くはずです。その制約の一つはともすれば「不親切だ」との批判も招くのかも知れないけれど、映画館という空間でさらに際立つそれら制約を守っていれば、ある瞬間から「  

映画の何を観ている?
映画本「イノセント」

映画の何を観ている?

監督:ルキーノ・ヴィスコンティ(1976年/イタリア・フランス/129分)

 映画が始まってしばらくスクリーン上で展開している動きを追い続けている間、どういうわけか非常に息苦しい感じを受けたことがまず印象に残っているのですが、その原因は主人公始めその愛人や妻などの行動が、序盤のかなり長い時間ずっと室内で行われていたこと、そこにはまるで外に通じる「窓」が無かったこと(単に見過ごして  

ビデオスルーな人生
映画本「僕らのミライへ逆回転」

ビデオスルーな人生

監督:ミシェル・ゴンドリー(2008年/アメリカ/101分)

 必要に迫られて映画を撮る羽目になるショップ店員の様子をコミカルに描いた本作は、どちらかと言えば映画を作る行為そのものへのオマージュが込められています。全体として決して上手く成功している作品とは思わないのですが、しかし、やがて映画を作ることの楽しさに目覚めていく彼等の歓びは十分に伝播する。「女優」をスカウ  

小さな生き物
制作途中「ニキフォル」

小さな生き物

監督:クシシュトフ・クラウゼ(2004年/ポーランド/100分)

 何処かにチャンスでも転がっていないかとカメラを持って外出しても、未だ対象を見る目の洗練されていない僕は、丸一日歩き回ってたったの一度もシャッターを押さずに帰宅してしまうことが多く、写真好きの人達のサイトに掲載されているような印象に残るショットというものは、どうしたらそこで出会った瞬間にそれがシャッターを  

染まるよ
制作途中「ダック・シーズン」

染まるよ

監督:フェルナンド・エインビッケ(2004年/メキシコ/90分)

 物語らしい物語の無い小説、というのは今ではもう珍しくも無いのですが、では映画の方面ではどうなのだろうか…というのは僕も知りたいくらいで、まるで状況が分からないのだけれど、ではこの映画を誰かに紹介するに当たってその物語をかいつまんで説明しようと思うと、それはかなり難しい、いや、別に複雑に絡み合った時空を行  

禁じられた色彩
映画本「おそいひと」

禁じられた色彩

監督:柴田剛(2004年/日本/83分)

 殺意。およそ正常な人間で、尚且つ余程世間離れした日常を送っていない限り、程度の差こそはあれど、人生の中で誰しも一度は抱く欲望ではないでしょうか(例えば極度の空腹時、丸々と太った鶏を見たら殺して食べたくもなるでしょう)。そこに至る経緯も特に複雑怪奇であるわけではなく、その理由のほとんどは大雑把に括ることが  

モノクロームエフェクト
映画

モノクロームエフェクト

監督:ジョージ・クルーニー(2005年/アメリカ/93分)

 すでに足下がふらついているのですが、そもそも当サイトのメインコンテンツは「まわるフリフリのフリ」だったはず。その一度聞いたら忘れられないフレーズを冠したコーナーは、主として写真をただ並べていくだけという、まあ、ありふれた写真日記みたいなものにしようと考えていたところ、どういうわけか現時点で映画百本の更新  

生きた証
映画本「僕の村は戦場だった」

生きた証

監督:アンドレイ・タルコフスキー(1962年/ソ連/95分)

 差し当たって年内、ゆっくりとしたペースで映画感想文を認めていくうち次第に明るみとなる事実なのですが、映画百本なんて大仰なタイトルを掲げた割には、僕はたいして映画を観ていなかったりします(つまり、そのうちにボロが出る、ということ)。鑑賞本数で言えばおそらく「映画鑑賞が趣味です」と、ブログサイトの自己紹介欄  

おしゃべりについて
映画本「画家と庭師とカンパーニュ」

おしゃべりについて

監督:ジャン・ベッケル(2007年/フランス/105分)

 映画に限らず小説や演劇など、物語をベースとした表現の中における台詞の役割や重要性について考えたりすることがあります。普通、ある映画を観てそれを誰かに説明する場合、例えばあらすじを簡素に伝える場合などに、その映画の中で交わされた会話を使って説明することは、まずありません。つまり台詞を一切用いずに叙事的に解  

映画百本とは
映画本「レミーのおいしいレストラン」

映画百本とは

監督:ブラッド・バード(2007年/アメリカ/112分)

 昨年末、それまでMacintoshのカスタマイズネタの提供を中心として4年間続いた当サイトをリニューアルするにあたり、では次に何を中心に据えて継続していくかぼんやりと考えていた中で、しぶとく居残った戯れの一つがこの映画百本。今さら映画の感想というのもネット上では星の数ほど散らばっていますし、全く思いもつかなかっ  

思いがけずスカーレットだったので
映画本「私がクマにキレた理由」

思いがけずスカーレットだったので

監督:シャリ・スプリンガー・バーマン&ロバート・プルチーニ(2007年/アメリカ/106分)

 … 男は小さく溜息を付きながら起き上がると、炬燵の上に足をかけて立ち上がり、そのままの勢いで天井からぶら下がっている電灯に向けて両手を差し入れ、切れた電球を回しながら、女に代わりのものを持ってくるよう声をかけた。女は炬燵に入ったまま男の言葉を無視し、薄暗いなか週刊誌をながめながら蜜柑を食べ続けていた。そ  

そして残ったもの
映画本「嫌われ松子の一生」

そして残ったもの

監督:中島哲也(2006年/日本/130分)

 かつて数十年前にヒットした洋楽に、ビデオがラジオ・スターを殺したという非常に物騒なタイトルの歌がありました。一般的な解釈では、そこで歌われているビデオというのは所謂プロモーション・ビデオ(以下PV)、つまりはブラウン管を通して、動く映像と同居する音楽を放送する手法が台頭し(つまりはMTV)、それまで音だ  

米新大統領誕生によせて雑感
映画本「華氏911」

米新大統領誕生によせて雑感

監督:監督:マイケル・ムーア(2004年/アメリカ/112分)

 突然ですがタイトルに「雑感」と書いた言い訳をしておくと、確かこの映画を観たのは2005年の2月頃だったか、つまり、本作はおそらくブッシュ前大統領の再選阻止を目論んで制作されたものの、その甲斐なく前年にはすでに彼は再選を果たしていた(歴史的にみても一般に、戦争状態の中でリーダーを取り替えることはまずあり得  

去年を待ちながら
映画本「ブレードランナー ファイナルカット」

去年を待ちながら

監督:リドリー・スコット(2007年/アメリカ/117分)

 僕にとって、それはいつやって来たのかと言えば、2001年だったということになるのでしょうか、かつて思い描いていた未来を「今」が抜き去ってしまった瞬間です。まだ遠く先に在ったはずの未来はしかし、やがて我が身をもって直に体験することになる。頭の中では分かっていたけれど、まるであっけなく、ありふれた日常の「今  

三角形になるまえに
映画本「Dear フランキー」

三角形になるまえに

監督:ショーナ・オーバック(2004年・イギリス・106分)

 上映が始まりスクリーンに流れる画を観て何となく、視野狭窄な圧迫感がしたのですが、原因はどうやらカメラの浅い被写界深度によるものらしい。これは少しやり過ぎなのではないかと思ったのだけれど、ほどなくしてそれはある感覚器官が通常あるべきレベルの機能に達していない、その状態を視覚的に言い換えたものだと理解しまし  

歩き続けるテンポ
映画本「アキレスと亀」

歩き続けるテンポ

監督:北野武(2008年/日本/119分)

 気が付くと意外にも北野武監督作品はさほど観ていなくて、これまで映画館で鑑賞したものと言えば『あの夏、いちばん静かな海。』『HANA−BI』の2本しかなく、それ以外にテレビ放映されていたのを見かけたのは『その男、凶暴につき』『キッズ・リターン』そして『BROTHER』の3本だけ(しかも、そのどれもが放送途  

交換のルール
映画本「イントゥ・ザ・ワイルド」

交換のルール

監督:ショーン・ペン(2007年/アメリカ/148分)

 近年のうだるような夏の暑さに慣れてしまった反動なのか、冬の寒さにはめっきり弱くなりました。遠赤外線ヒーターの効果空しく冷え込んだアパートの一室で身体を小さく震わせていたある日、ふと思い立って映画館まで暖を取りに出かけたのは、自宅部屋の何倍もあろうかという空間を擁する映画館ではあってもそこは商業施設、ここ  

壊れかけのラジオ
映画本「ペッピーノの百歩」

壊れかけのラジオ

監督:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ(2000年/イタリア/97分)

 時の流れはますます加速し、もうすでにメディアから忘れ去られつつあるのが、昨年の話題の一つではあった某大物音楽プロデューサーの巨額詐欺事件。個人的には事件そのものよりも、事後におけるかつて某の創作した著作物を取り扱う出版・放送各メディアの対応にインパクトを受けました。まずは関係するユニットの最新アルバムが  

立ち位置をずらせば
映画本「月に星」

立ち位置をずらせば

監督:田淵史子(2003年/日本/103分)

 主人公の女性が自宅で母親の作ってくれた朝食を摂っている場面がとても奇妙に思えたのは、その主人公がまるで壁に向かっているように見えたから。正確にはキッチンとダイニングの間に設けられた仕切りにせり出した、ちょうど棚のような部分に食器を並べていたからなのですが(その構造をうまく言葉で説明することができなくて申  

レンズの向こう側
映画本「カーズ」

レンズの向こう側

監督:ジョン・ラセター(2006年/アメリカ/122分)

 まだ中学生の頃だったか、友人と当時話題になっていた『機動戦士ガンダム』の映画を片田舎からゴトゴト電車に揺られ、うらぶれた繁華街にある映画館まで観にでかけたのですが、それまでの期待に反し鑑賞中に多少違和感を覚えました。そこで生じた疑問とは、果たしてこれは「映画」なのかということ。どのような条件を満たせば、  

深入りもほどほどに
映画本「郷愁は夢のなかで」

深入りもほどほどに

監督:岡村淳(1998年初版制作・2001年改定版制作/日本/155分)

 今はもうすでに終了しているのかもしれませんが、以前TBS系の深夜に「ドキュメントDashDash」という30分枠のTVドキュメンタリー番組が放送されていました。そこでカメラが追うのは、そこそこに各界で著名な人、あるいはまったくの素人(もちろん、ちょっと変わった価値観や背景を持つ人)。普通ならまず知ることのないだ  

いつか見たアレ
映画本「童貞。をプロデュース」

いつか見たアレ

監督:松江哲明(2006-2007年/日本/85分)

 実は今世紀に入ってからふと、何故人々は物語をこうも渇望しているのか、ということが気になり始めました。映画はもちろんテレビドラマや小説、ゲームの類など、あらゆるジャンルの表現にはその骨格に物語が在り、それが与える発見の喜びやカタルシスを求めて、消費者はお金の使い道を考えているように思えます。さらに物語はそ  

野次馬どもを見よ
映画

野次馬どもを見よ

監督:ジョゼ・パジーリャ(2002年/ブラジル/119分)

 数年前のこと、地下1階にある駅の改札を出て地上に出る階段に向かって歩いて行くと、黒いコートを羽織ったサラリーマンとおぼしき一人の中年男性がふらふらと千鳥足で階段に足をかけたところが目に入りました。なんとなく注視していると、その男性は3段ほど登ったところで突然バランスを崩し、あろうことかそのまま仰向けに倒  

あえて吹き替え版
映画本「アース」

あえて吹き替え版

監督:アラステア・フォザーギル/マーク・リンフィールド(2007年/ドイツ・イギリス/98分)

 子供の頃、1973年に制作されたチャールトン・ヘストン主演の近未来SF映画『ソイレント・グリーン』のテレビ放映を観たのですが、主人公の友人である老人が、とある施設にて、かつて地球上に存在した緑豊かな自然の映像を眺めながら、人生最後の瞬間を迎えようとしている場面が(物語のオチよりも)とりわけ強く印象に残って  

腹は減るのだよ
映画本「タイマグラばあちゃん」

腹は減るのだよ

監督:澄川嘉彦(2004年/日本/110分)

 このドキュメンタリー映画を観たのはもう3年前の2005年のことなのですが、90年代ころから聞かれるようになった自然回帰ブームのようなもの、例えばスローライフとかスローフードとか、あるいは都会のビジネスマンが余暇を利用して農業を経験する週末ファーマーのような動きが想起させる食料にまつわる生産と消費の「緩やか  

腹が減るのです
映画本「愛の予感」

腹が減るのです

監督:小林政広(2007年/日本/102分)

 ここのところめっきり食欲が衰退したものの、腹が減れば一人前に「グググ~」と大きな音をさせるところは若い頃から変わってないので、劇場へ出向く前には少なくとも上映時間は持ちこたえるように軽く腹ごしらえをしておくのですが、もちろん本作の鑑賞前にもきちんと食事を取っておいたにもかかわらず、予想外に映画鑑賞中やた  

イラン男子トイレ事情
映画本「オフサイド・ガールズ」

イラン男子トイレ事情

監督:ジャファル・パナヒ(2006年/イラン/92分)

 社会的・文化的な男女の性差という話題を耳にすると、なぜか真っ先に思い出すのは、太田房江前大阪府知事の土俵にまつわる一件です。これまでの因習に従い土俵は女人禁制ということになっているのですが、そこへ知事として賞の贈呈の為に上がりたいと申し出て、さて日本相撲協会がどう判断するか大きく話題になりました。なるほ  

ケンカする時は場所を選べ
映画本「300」

ケンカする時は場所を選べ

監督:ザック・スナイダー(2007年/アメリカ/117分)

 おそらく池袋に来たのは宮沢章夫の『be found dead』を観た時以来3~4年振り、新文芸坐という劇場へ映画『300』を鑑賞する為だったのですが、山の手線を降りて改札をくぐり、地下から出口を通って地上に出、目に入った近くの銀行ATMで今日一日分のお小遣いを下ろし、さて、いよいよ初めて赴くその劇場があると思われる  

美形キャラに導かれて
映画本「エクスマキナ」

美形キャラに導かれて

監督:荒牧伸志(2007年/日本/105分)

 物語もいよいよ佳境、テロリストとの最終決戦に挑もうとするなかで、さりげなくも注目すべき台詞が聞き取れます。その「思いっ切り暴れられる」という言葉こそは、バトル描写が大きな比重を占めるジャンルにある本作品を手がけた制作陣の、観客の大きな期待に応えようとする強い意思表明に取れたのです。果たして決戦の場は都市  

機械の立ち居振る舞い
映画本「トランスフォーマー」

機械の立ち居振る舞い

監督:マイケル・ベイ(2007年/アメリカ/145分)

 本作の要であるCGによるロボットメイキングはこちらの予想を上回るリアリティを持って描写されていて、実写との合成にまったく違和感を覚えないほどのクオリティなのですが、それを実現しているのはレンダリングの質感もさることながら、カメラとのマッチング、いわゆる「マッチムーブ」と呼ばれるものが効果的に使われている  

子供の領分
映画本「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」

子供の領分

監督:摩砂雪/鶴巻和哉(2007年/日本/96分)

 上映が始まってからかなり時間も経過し、いよいよこれがクライマックスかと思われた、所謂ヤシマ作戦における決戦の場面。その作戦内容がどのようなものなのか、全く知識の無い僕は、果たして日本全土から電力をかき集めてきて彼等が一体どうするつもりなのか、おそらく過激で爽快、壮麗で美麗なバトル描写が展開されるに違いな  

爆発です。
映画本「ベクシル ー2077日本鎖国ー」

爆発です。

監督:曽利文彦(2007年/日本/109分)

 一言でCGと言っても様々な表現方法がありますが、トゥーン・シェーダーを駆使した日本の長編アニメーションということでまず想起されるのは、’04年公開の『APPLESEED』でしょうか。トゥーン・シェーダー(またはセル・シェーダー)と呼ばれる、3Dでモデリングされた立体を従来のアニメのようなセル画のテイストでレン  

喜びは人を回す
映画本「パリ、テキサス」

喜びは人を回す

監督:ヴィム・ヴェンダース(1984年/フランス・西ドイツ/146分)

 終盤、非日常な空間における男女それぞれのモノローグの場面。男が望むなら、女の姿を好きなだけ眺めていることが出来るにも関わらず、マジックミラーに対して背を向けた後、女も自分の姿を映していた鏡から身を隠し、呼応するように独白を続けます。静けさの中にも張りつめた空気が観る者の気持ちに食い込んでくるこの場面が、  

その時に僕は
映画本「ツヒノスミカ」

その時に僕は

監督:山本起也(2006年/日本/80分)

 人間、どこでどんな死に方をするか全く分かりません。多くの人はやはり長年家族と共に住み慣れた家で生涯を全うするのが本望なのでしょうが、現実はなかなか希望通りには行かない事の方が多いのかもしれません。ほとんどの場合、馴染みの無い消毒液の匂い立ちこめる病室の中で人生の終わりを迎えることになるような印象がありま  

僕の温暖化対策
映画本「不都合な真実」

僕の温暖化対策

監督:デイビス・グッゲンハイム(2006年/アメリカ/96分)

 おそらくアル・ゴアはうんざりするほど「また政界に復帰する意思はないのか?」と多くの人々に聞かれたに違い在りません。しかし頑なにそれを否定しているのは、今の彼を駆り立てている「地球温暖化問題」が、長期スパンに渡って取り組まなければならない問題であり、たかが数年の任期の中で実現するのはほとんど無理、また市民  

接続される身体
映画本「ダイ・ハード4.0」

接続される身体

監督:レン・ワイズマン(2007年/アメリカ/129分)

 まず印象的なのは物語の中盤、これから長距離を移動するため、路上に停めてあった高級車を拝借しようとしている場面。マクレーン刑事が昔ながらの方法で車のエンジンをかけようとしているところに、ジャスティ・ロング扮する我らがマック君、いや、マット・ファレルが正面のバンパーを思いきり殴りつけ、その高級車のエンジン周  

カメラ!カメラ!カメラ!
映画本「アンリ・カルティエ=ブレッソン 瞬間の記憶」

カメラ!カメラ!カメラ!

監督:ハインツ・バトラー(2003年/スイス・フランス/72分)

 僕は以前からカメラを持ってはいたのですが、何かイベントがあった際に思い出スナップとして適当に撮る、というごく普通の使い方しかしていませんでした。初めて自分で買ったカメラはオリンパスの「IZM300」。これは同窓会で久々に再会する友人等を撮っておこうと思い、当時名古屋の大須アメ横にあった安売りカメラ屋で、5万  

ワンショットのリアル
映画本「美しい人」

ワンショットのリアル

監督:ロドリゴ・ガルシア(2005年/アメリカ/114分)

 「全部継ぎ合わせだ。ほら、ライオンがシマウマを見ているだろ。シマウマは別の国で去年、撮影された…」

 

戦略ナシ(あるいは、跳び蹴りに気をつけろ2)
映画

戦略ナシ(あるいは、跳び蹴りに気をつけろ2)

監督:ポン・ジュノ(2006年/韓国/120分)

 およそ怪獣映画、あるいはモンスターパニック系というジャンルの作品に人は何を求めているのか、とりあえず僕の場合、何を楽しむかと言えばまず基本的なところでその怪物の造型や生態、次にバトル描写、ということになります。それらの楽しみどころに本作を照らし合わせてみると、登場する怪物のデザインについては期待したほど  

交わらない言葉
映画本「ククーシュカ」

交わらない言葉

監督:アレクサンドル・ロゴシュキン(2002年/ロシア/104分)

 序盤にとても共感を覚える場面があります。文学青年兵士が何かしら重大な軍則違反をおかしたのか、周囲に人気の無い場所にある巨大な岩石の上に鎖で繋がれ一人置き去りにされてしまうシーン。独り残された彼は、かつての仲間から僅かな時間だけ生き長らえるよう与えられた物資を活用し、自分を繋いでいる鎖と杭から身体を解き放  

さよならシロクマくん
映画本「ホワイト・プラネット」

さよならシロクマくん

監督:ティエリー・ラゴベール/ティエリー・ピアンタニダ(2006年/フランス・カナダ/83分)

 以前、ラジオに出演していたあるミュージシャンが、仕事で訪れたアフリカについての印象を語っていたのが記憶に残っています。初めて訪れたアフリカは、彼がこれまでイメージしていたものとはまるで違い、そこではライオンの咆哮はおろか、小鳥のさえずりや虫の羽音さえ聴こえない、完全な静寂の支配する世界だったと。ましてや  

物語よ、音楽に導かれよ
映画本「スーパーマン リターンズ」

物語よ、音楽に導かれよ

監督:ブライアン・シンガー(2006年/アメリカ/154分)

 最後にスーパーマンの映画を見たのはおそらくテレビで再放映されていたもので、それも田舎で観たに違いありませんから、もしかしたら20年近く前のことになるのですが、クリストファー・リーブによるスーパーマン第一作目はしっかり見たような気がするものの、シリーズ化された後の第二作・第三作はテレビ放映されていたのをつま  

沈黙のあと
映画本「ヴェラ・ドレイク」

沈黙のあと

監督:マイク・リー(2004年/フランス・イギリス・ニュージーランド/125分)

 映画が始まってその映像にフィルム・グレイン(ノイズ粒子)がほどよく散りばめられているのを見るにつけ、とても心が落ち着いたのを覚えています。実はこの映画を観たのは昨年の11月頃だったか、遅れに遅れて今書いている感想文ではあるけれど、もし簡素に走り書いて済ますにしても、そのフィルム・グレインについての印象は必  

暴力を超える暴力
映画本「ヒストリー・オブ・バイオレンス」

暴力を超える暴力

監督:デイヴィッド・クローネンバーグ(2005年/アメリカ/96分)

 冒頭、二人の男が自動車の周りで物語には直接的に関係のないと思われる会話を交わしている場面、その自動車1台と二人の男をフレームに収めたカットが割と長い時間続くのを眺めながら、とはいえそんな場面は別によくあるものと思いつつ、自動車がゆっくり移動し始めたのに合わせカメラも並行に横へ移動していくのを見るにつけ、